銀行で発覚した真実
通帳がないままでは確認のしようがないため、母親をつれて銀行の窓口に出向き、10年分の取引明細の履歴を取りました。それで判明したことは、10年前から毎月のように多額の金額が引き出されているという事実でした。これについても、母親に聞いてわからないというだけでした。弟夫婦にもその書類を見せて聞きましたが、とにかく「知らない」の一点張り。母親からお金がないと言われて真治さんは何年も仕送りしたのに、愕然とし、思わずめまいがしました。弟は会社員で収入も多くないと思われるのに、自宅は土地を買って家は新築しています。
使途不明金を突き止めたいが…
高齢の母親が毎月20万円、30万円もの支出をすることは考えにくいため、弟夫婦が母親の預金を引き出して、生活費、家のローンの補填や子供の教育資金に使ったというところでしょう。しかし、弟夫婦はそれを認めず、母親も言いません。それが悔しいのでこれを突き止める方法はないか、今後、どうすればいいかというのが真治さんの相談内容でした。
使い込んだ人の逃げ切り
親のお金を子供が使い込むことはたまにあることで、これが発覚すると知らなかった子供は怒り心頭になります。しかし、使い込んだ本人はたいていの場合、認めません。
「知らない」「母親が使ったのでは?」ということで逃げ切ります。家庭裁判所の調停でも、使い込んだ人が想定されても、決定的な証拠がなければグレーゾーンは罰せず、「わからない」で逃げ切れるのです。
真治さんにも、これ以上追及しても得策ではないため、今後どうするかのみを対策することをアドバイスしました。まずは母親の通帳を真治さんが管理し、弟が引き出せないようにする、今まで引き出された金額を想定し、それを加味した遺産分割として母親に遺言書を作ってもらう、母親と任意後見契約をして任意後見受任者に自分がなることなどです。真治さんは踏ん切りがついたと言われ、早速、前向きなことだけに取り組むようにするとおっしゃって帰られました。
◆相続実務士のアドバイス
●できる対策
母親の預金から引き出された額を確認しておく。
引き出された額を考慮した遺産分割として母親に遺言書を作ってもらう。
母親の預金の管理はSさんがして弟には情報共有する。
●注意ポイント
お金が引き出された事実が確認できても認めなければ特定できず。
引き出したもの勝ちのことが多い。
特定することも難しいため、これからできることに専念したほうが得策。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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