銀行になんて任せるんじゃなかった…地主だった父の遺産は7億円。「俺は長男だから!」急にイキり始めた兄と「何もしない」銀行の板挟みになった〈52歳女性〉が後悔したワケ【相続の専門家が解説】

銀行になんて任せるんじゃなかった…地主だった父の遺産は7億円。「俺は長男だから!」急にイキり始めた兄と「何もしない」銀行の板挟みになった〈52歳女性〉が後悔したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

父親が亡くなり、兄と妹と3人で相続手続きをしていた瑞希さん(52歳女性)。公正証書遺言を見つけたものの、その執行者は父親が生前取引していた「都市銀行」でした。遺産の8割が土地ということで途方に暮れる瑞希さん。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続対策について詳しく解説します。

父親の生前対策は、どうしておくべきだったのか?

もうすでに父親が亡くなられてしまっているので、間に合わないことではありますが、仮に相続対策の専門会社である夢相続がサポートできていたとすれば、次のような対策をご提案します。

 

節税対策

自宅の土地がかなり広く、またほとんど空き地であったため、自宅を3分の1程度とし、残る3分の2は土地活用して賃貸マンションを建てる。あるいは売却して資産組替し、別の立地に賃貸不動産を購入する。

 

これだけで相続税は半分以下に減らせます。

 

納税対策

納税は貸宅地を予定するなら、生前に売却をして資産組替をする。というのも、貸宅地の多くが評価以下にしか売れないため、生前の売却が望ましいから。

 

相続になった場合でも、申告期限までに売却し、時価申告をすれば、相続税はうんと減らせます。

 

分割対策

自宅を売却して分ける場合は共有でもいいが、残して維持したい場合は、共有にするのは避けたいところ。

 

生前に残すところ、売却するところを決めて、分筆して単独で保有、処分できる形にしておくことが望ましいと言えます。

亡くなってからでもできること

節税対策

貸宅地の多くが評価以下にしか売れない見込みの場合は、申告期限までに売却し、時価申告をすれば、現実的な評価となり、相続税が減額できます。

 

納税対策

貸宅地の売却だけでなく、自宅の一部も売却しないと納税できません。自宅の残し方、売却の仕方を効率よく、納付期限までにして売却代金で納税できるようにします。

 

分割対策

遺言書では自宅は子どもたちが3分の1ずつ相続するとしか記載がないようですが、それでは土地のすべてが共有になります。共有にしたままだと、意見の相違などが生じた場合、対立してしまう可能性もあります。

 

残すところ、売却するところを決めて、分筆し、残すところは単独名義として、売却するところは3分の1のままで売却するのがよいでしょう。

 

遺言執行者を依頼しないこともできる

公正証書遺言があり、遺言執行者が指定されているとしても、合意により、遺言執行を依頼しないこともできます。それには相続人全員の総意であることが必要で、遺言執行者の理解も必要です。

 

遺言執行者の合意が得られない場合、適任ではないとする理由があれば、家庭裁判所で遺言執行者の解任手続きを申し立て審判を下ろしてもらうようにします。

相続実務士のアドバイス

瑞希さんのお父さんは付き合いのある銀行なので良くしてくれるだろうと思って勧められるままに公正証書遺言を作られたと思うのですが、相続の専門家であればもう少し具体的な内容にして、相続人が納税に困らないよう、工夫されると思います。

 

頼むのが銀行だから安心とは言えず、相続、遺言書、不動産に慣れた専門家に依頼しないと、瑞希さんご兄妹のように何千万円も損することになりかねません。

 

いずれにせよ、今からでもできることをサポートさせていただき、少しでも不安が解消できるよう取り組みます。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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