投げ売りと破綻を防ぐために始まった、FRBによる「臨時資金供給」
そして2023年にかけ、一部の中小銀行から預金の急速な引き出しが生じました(→この2023年春の地銀危機の元となった預金引き出しは、「高金利目当てによるMMFへのシフト」のためではありませんが、その背景が複雑であるために割愛します)。
これらの中小銀行は、(金利上昇で含み損のある)有価証券の売却で預金流出に対応し、結果生じた巨額の実現損と資本の減少がさらなる預金流出と経営破たんにつながりました。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、銀行による有価証券のさらなる「投げ売り」と破たんを防ぐため、銀行に資金を臨時供給しました。これは、バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)と呼ばれます。
FRBは、銀行が保有する有価証券を担保に資金を貸し付け、銀行はFRBから得た資金を預金流出に充てることができました。また、「FRBが銀行に資金を供給する」というヘッドラインが、預金者や金融市場を落ち着かせました。
このFRBの臨時資金供給プログラム(BTFP)は来年3月に終了します。
しかし、銀行が依然として、多額の有価証券含み損や商業用不動産向け貸出で苦しむ様子からわかるとおり、状況は以前のままです。
おそらくFRBは資金供給を継続し、この含み損の問題を「先送り」にして、「なにも問題がなかったようなふりをする」でしょう。ただし、銀行の資産投げ売りや資本減少は「先送り」にできても、先に述べたような、預金金利(全米平均0.56%)とMMFの利回り(4%台半ば)の差による預金流出の潜在的な問題は残ります。