米銀が保有する有価証券は「5,100億ドルあまり」の含み損
次に、米国の銀行が保有する有価証券の含み損を考えます。米銀は直近6月末時点で5,100億ドルあまりの有価証券の含み損を抱えます。[図表2]に示すとおり、これは銀行の資本の20%強に相当します。
時系列で経緯を説明します。銀行は新型コロナ・パンデミック後の低金利時に多額の米国債やMBS(住宅ローン担保証券)に投資を行いました。
巨額の財政支出で家計や企業の預金口座に預金が振り込まれるとともに、それをファンディングするために多額の米国債が発行されました。
また、金利の低下とともに住宅ローンの低金利での借り換えが進みました。これは、既往の、高利回りの住宅ローン担保証券(MBS)が繰り上げ償還され、新しい、低利回りのMBSが発行されることを意味します。
すなわち、銀行が保有する有価証券の約定利回り(運用利回りの持ち値)は大幅に低下しました。この「低利回り」と「急速かつ大幅な利上げ」が、「含み損」と「預金流出」という2つの問題を引き起こします。
2022年以降の急速な利上げとともに市場金利が上昇し、銀行は、①保有する有価証券(米国債やMBS)に多額の含み損を抱えることになりました。
利上げとともに起きたのが、②預金の流出です。上記のとおり、銀行は、資産サイドの保有有価証券の運用利回り(持ち値)が低く、なおかつ、一部の商業用不動産融資は利払いが遅延するなどして受取利息が低く留まったことから、(銀行は)利ザヤを確保するために、負債サイドの預金に高い金利を支払うことができませんでした。
他方で、短期の有価証券に集中投資をするMMFは利上げに沿って高い利回りを提供することができました。このため、家計や企業は銀行預金からMMFへと資金をシフトさせました。