弟の頼む税理士が相続には不慣れで…
父の代から賃貸業の申告などの依頼をしていた税理士さんがおり、実家にいる弟も、その方を全面的に信頼していたことから、相続税の申告もその先生に依頼するとのこと。
真美さんにすれば、嫁いでから実家の様子がわからないので、弟が仕切るのは仕方がないとは思いつつも、全体像がわかりません。また、弟が依頼した税理士はどうも相続には慣れていないようで、不安が残ります。
その件について、今回ご相談に来たというわけです。自分が納得する相続をしたい、できるだけ節税して、父の財産を残したいという気持ちです。弟にもこちらを推薦いただき、申告もこちらで依頼したいとの意向でしたが、それは弟が譲りません。
しかし、弟の申告した税理士は遺産分割協議には入ろうとせず、決まれば計算するという態度だったため、最終的には真美さんの依頼で、当社が相続をコーディネートすることになりました。
真美さんの希望は、父が苦労して維持した土地を守るということ
弟は、自分が大部分を相続したいようで、母親へは3割程度の財産を相続させるという案を出してきました。真美さんは苦労をかけた継母には多く相続してもらいたいので、納得できないとのことです。それに無税の特例の枠も残っており、納税の負担を減らすためにも、配偶者の特例を生かせるよう、弟の相続を母親へ変更することを条件に出しました。これで、納税額を約1億円減らすことができました。
弟は、真美さんへは全財産の5%程度の現金ではどうかと提案してきました。納税分も用意するので手取りで数千万円という提示です。しかし、真美さんの希望は、父親が苦労して維持してきた土地を残すことです。会社を辞め、家の財産でのうのうとしている弟に対しては信頼できないところがあるというのです。そこで、こちらは法定割合相当を現金と土地で要望することにしました。
真美さんは実家を離れて久しく、父親の土地の所在の全部はわからないとのこと。先方の税理士に送ってもらうよう依頼しても送られてこないため、名寄せ帳をもとにこちらで調査し、貸し駐車場になっている角地の土地を選択、交渉したところ、かなり難色を示されましたが、最終的には承諾を得られました。現金を合わせて法定割合とすることも承諾をもらえたので、その現金で納税もできました。
遺産分割協議が申告期限に間に合わないと未分割の法定割合となることから、期日が迫っており、税理士からも法定相続分で申告を勧められたようです。弟も、長引いても得策ではないと判断したようで、申告期限の前日に調印、当日に申告、納税ができたのでした。
不仲な姉弟が最終的に落ち着いた、20年前の決断
実の姉弟なのに双方とも相手を信頼できず、正直遺産分割は難航していました。しかし、時間がないことが幸いとなり、これ以上、争わない決断がされたのです。
真美さんの実印は父親が作ってくれたもので、納得いかない書類に押すわけにはいかないと決意していたようです。また、父親の事業を継いだだけで何の苦労もしていない弟に対しては、誰のおかげで今の自分があるか、しっかり自覚してもらいたいとも言ってました。ともに両親や家を思う気持ちは変わらないのに、本人達の溝は深いものがあると感じました。実の姉弟ですから、この先、わだかまりがなくなることを祈るのみです。