介護してきた妻の寄与分は?
司法書士に「10年も自宅で介護してきた妻の寄与分はないのか?」と聞いてみましたが、寄与分が認められることは難しいという返事。困った由美子さんは別の知人から紹介されて相談にこられたのでした。
2人の子どもたちは独立して同居をしておらず、仕事もしているため、介護に協力してもらうことは難しい状況。先妻の子どもは行き来すらしていないため、さらに期待できず。結果、由美子さんが仕事をやめて、ずっと自宅でひとりで介護を担当してきたのでした。
由美子さんの貢献により夫の生活が成り立ってきたのは明らかだと言えますので、遺産分割協議において考慮してもらいたいところ。
介護における貢献は寄与分として考慮される
妻が被相続人(夫)を介護していた場合、その介護が相続財産の維持・増加に貢献したと認められる場合には、寄与分として考慮される可能性があります。ただし、妻が相続人である場合の寄与分は、一般的に認められにくい傾向にあります。以下がその理由と条件です。
1.法律上の役割としての貢献とみなされるケースが多い
配偶者の介護は、家族として当然の役割であるとされ、特別な貢献とは見なされにくい傾向があります。そのため、妻の介護については「寄与分」として認められるには一定の基準が必要です。
2.具体的な寄与分が認められるための条件
介護が相続財産の維持や増加に特に寄与したと評価されるためには、次のような条件を満たす必要があります。
- 長期間にわたり、特別な介護やサポートを提供した
- 外部の介護サービスを利用する代わりに妻が全ての負担を担ったことで、財産の減少を防いだ
- 通常の家族の役割を超えた負担や犠牲を負ったと認められるケース
3.寄与分が認められる可能性があるケース
例えば、妻が仕事を辞めて夫の介護に専念し、介護費用が大幅に節約された場合など、経済的貢献が明確であれば、寄与分として認められる場合があります。また、長期間にわたる24時間介護を続けたケースでも、寄与分が考慮されやすいです。
4.遺産分割協議での合意の可能性
法律上、寄与分の認定が難しい場合でも、遺産分割協議で相続人が全員合意すれば、実質的に寄与分を考慮した分割が可能です。この場合、他の相続人との話し合いによって、妻の介護の貢献を認めてもらう形で調整することが現実的な解決策となります。
介護の寄与分が認められるには相続人間での協議が重要であり、必要に応じて第三者を交えた話し合いや専門家の助言を得るとスムーズに進みやすくなります。