私、仕事も辞めたんですけど…先妻の子どもにも平等に遺産を分けないとダメですか?夫を亡くした63歳女性、意地でも〈妻の寄与分〉を認めてほしいワケ【相続の専門家の助言】

私、仕事も辞めたんですけど…先妻の子どもにも平等に遺産を分けないとダメですか?夫を亡くした63歳女性、意地でも〈妻の寄与分〉を認めてほしいワケ【相続の専門家の助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

自宅で介護をしていた夫が亡くなり、相続手続きを始めた由美子さん(68歳女性)。相続人は、妻である自分と子ども二人だけだと思いきや、夫には先妻との間に二人の子どもがいると言います。遺言書もない複雑な遺産分割において、由美子さんの介護における貢献は寄与分として認めてもらえるのでしょうか。本記事では、遺産分割において寄与分が認められるケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

遺産分割は法定割合でなくてもよい

遺産分割協議では、必ずしも法定相続分の割合で分ける必要がない理由はいくつかあります。以下がその主な理由です。

 

1.遺産分割は相続人間の合意が最優先

遺産分割協議は相続人全員の合意をもって成立します。法定相続分は法律上の基準ですが、協議によって相続人全員が納得すれば異なる割合での分割も可能です。

 

2.相続人の事情に合わせた分割が可能

相続人によって経済状況や生活環境が異なるため、法定相続分通りでは各相続人の事情に合わないケースもあります。例えば、同居して親の介護を行っていた相続人に多くを分けることで公平を保つといった対応もできます。

 

3.財産の種類や性質に応じた調整

不動産や株式など、分割しにくい資産が遺産に含まれる場合、物理的に分けることが難しいため、特定の相続人に引き継ぐ一方で他の相続人には代償金(代償分割)を支払うなど、法定相続分と異なる形で調整を図ることがあります。

 

4.節税や資産保全のための工夫が可能

法定割合に従うと相続税の負担が増える場合もあります。そのため、特定の相続人に集中させることで節税効果を狙ったり、事業承継において後継者が事業用資産を相続しやすくするための調整を行ったりするケースもあります。

 

5.遺言書がある場合

被相続人が生前に遺言を残している場合、その内容に基づく相続分が優先されるため、必ずしも法定相続分での分割は必要ありません。遺言の内容を尊重しつつ、協議の中で各相続人が同意すれば、法定割合を超えて柔軟に分割することが可能です。

 

このように、遺産分割協議では相続人全員の合意が前提であり、法定割合はあくまで指針に過ぎません。状況に応じて柔軟な分割方法が選ばれるのが実務上のメリットです。

先妻の子どもにも理解を得る

由美子さんの2人の子どもたちはこれからの由美子さんの生活を考えると自宅も金融資産も一旦は由美子さんが相続してくれていいと言ってくれています。残るは先妻の子どもたちです。

 

戸籍上の親子でも、40年以上も音信不通で、すでに親子の情はないかもしれません。介護にも、財産の形成にも貢献はしていませんので、その権利を由美子さんに譲渡してもらうように協力を依頼するところからはじめていいのではとアドバイスしました。

 

子どもたちの反応により遺産分割の内容が変わりますが、まずは現実的な貢献度を考慮した分割案の提案をお勧めしていきます。
 

 

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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