自宅で介護をしていた夫が亡くなり、相続手続きを始めた由美子さん(68歳女性)。相続人は、妻である自分と子ども二人だけだと思いきや、夫には先妻との間に二人の子どもがいると言います。遺言書もない複雑な遺産分割において、由美子さんの介護における貢献は寄与分として認めてもらえるのでしょうか。本記事では、遺産分割において寄与分が認められるケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
夫が亡くなった
63歳の由美子さんから相談がありました。由美子さんの夫(70歳)は10年前に仕事中に脳梗塞で倒れて、救急車で病院へ搬送された経験があります。職場の同僚の判断が早く、緊急手術をして一命はとりとめることができたのです。
けれども、半身不随の後遺症があったため、職場は退職し、自宅での介護生活となっていたのですが、定期健診の翌朝、突然、亡くなってしまったといいます。
相続の手続きが必要と、知人から紹介をされた司法書士に依頼をしたが、しっくりこないことがあるので相談したいということでした。
遺言書は作れなかった
由美子さんは初婚ですが、夫は再婚です。再婚後に2人の息子に恵まれました。相続人は3人と思いきや、先妻との間に2人の子どもがいるといいます。夫は再婚後は子どもたちの話をすることもなく、会ってもいないと思われますので、由美子さんも然り。会ったことはなく、どこに住んでいるのかすら、わかりません。
以前より相続になったら困るだろうと思い、遺言書を作ってもらいたいと言ってはいましたが、夫は80歳になったらというような返事で、遺言書はありません。今後の手続きのためには先妻の子どもたちにも協力をしてもらわないと進まないため、知人に司法書士を紹介してもらい、戸籍から現住所を確認することができ、相続人関係図の作成もしてもらいました。
財産は5,700万円、司法書士のアドバイス
夫の財産は自宅の土地、建物3,500万円、預貯金と株が2,200万円。基礎控除の6,000万円以内のため、相続税はかからず、申告の必要もありません。税務署にはなにもしなくていいのは一安心ですが、遺言書がないので、相続人全員で遺産分割協議をして財産の分け方について合意を得て分けていく必要があります。
戸籍の収集を依頼した司法書士の先生は、妻が2分の1、子どもたちが2分の1(それぞれ2,850万円)となる法定相続割合で相続することになるので、由美子さんが自宅に住み続けるなら、子どもたちへ650万円を用意する必要があると言います。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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