信念が軸であることを歴史から再確認
木戸泉酒造のこだわりやノウハウは多岐にわたります。実際、「調べる」をもとにピックアップするキーワードが、次から次へといくらでも出てきました。
そうしたなかで、ブランディングの軸を探すのに特に役立ったのが歴史の年表です。作成した歴史の年表は、「いつ、何をしたのか」だけでなく、「なぜ、そうしたのか」「どんな苦労があったのか」ということもできる限り書き込むようにしました。
それによって浮き彫りになったのが、木戸泉酒造は一貫して「自分たちが本当に良いと信じる酒をつくってきた」という事実です。時代の流れに逆らっても、失敗を重ねても、自分たちが「旨い酒」「良い酒」と信じる日本酒をつくってきました。
例えば「高温山廃酛」も、当初は酸が激しすぎるために日本酒と呼べるような酒にならなかったそうです。また、「濃厚多酸酒」の「AFS」も、開発した当時は酸味のある日本酒が好まれず、まったく売れなかったといいます。そうした苦難にも負けなかったのは、信念の強さが並大抵のものではなかったからです。
そしてこの信念こそが、木戸泉酒造のブランディングの軸になるものでした。「自分たちが本当に良いと信じる酒をつくってきた」というのは、見方によっては頑固で不器用なやり方ともいえます。本人たちも「このやり方でいいのか」という迷いがなかったわけではありません。
しかし、年表をつくって歴史を可視化し、このやり方を貫いてきたからこそ今の木戸泉酒造があると再確認し、その信念こそが、未来につなげていくべき企業のDNAであると確信したのです。取り組みが多岐にわたる挑戦の歴史を、一つひとつ丁寧に紐解くことで見つけた揺るぎない軸でした。
この揺るぎない軸は、木戸泉酒造の商品ブランディングにもしっかりと反映させていきます。
昨今は日本酒の楽しみ方が多様化し、日本酒の熟成についても注目度が上がっています。ワインの普及なども影響して、日本酒で「酸」を楽しむ人も増えています。それが木戸泉酒造の熟成酒や「濃厚多酸酒」にとって追い風になっていますが、それも自分たちの信念のもと、ほかに先駆けてつくってきた結果だといえます。
木戸泉酒造がつくる酒に時代が追いついてきたのです。変わることのない信念が現代の日本酒ファンをも魅了する酒を生み出してきた物語は、商品価値を高めるブランディングにも大いに活かすべきであることは確かです。
株式会社第一紙行 ブランディング事業部