(※写真はイメージです/PIXTA)

企業の理念や歴史、地域性を軸として商品を発信する「ルーツ・ブランディング」。唯一無二の企業へと成長するため、どのように商品の付加価値を高めているのでしょうか。株式会社第一紙行 ブランディング事業部の著書『地域と企業の未来を紡ぐ ルーツ・ブランディング』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、詳しくみていきましょう。

「調べる」「磨く」「魅せる」の3つのステップ

ルーツ・ブランディングは、「調べる」「磨く」「魅せる」の3つのステップで行うのが基本的な流れです。

 

まず第1ステップの「調べる」です。これがルーツ・ブランディングの肝になります。

 

一般的な市場調査や3C分析なども行いますが、私たちは特に歴史的背景、地域特性、企業の強み、経営者や従業員の思いなど、モノづくりの背景にある根っこを深掘りして徹底的に調べます。

 

なかでも「事業を育んだ風土」と「企業が受け継いできた精神」はとても重要です。なぜこの地で事業が起こり、続いてきたのかを知ることで企業の原点を掘り起こし、未来に受け継ぐための価値を見いだすことができるからです。

 

調査方法としては、新聞や雑誌の過去記事、論文などの客観的資料のチェック、経営陣・従業員への取材はもちろんですが、いちばん大切なのが直接現地へ足を運び、現場の空気感をとらえることです。実際に体験することで、資料やインターネットでは分からないものが見えてきます。

 

また、第三者の視点で見ることで、当事者には当たり前すぎて気づけなかった価値を発見し、それが大切なコンセプトのヒントになることもよくあります。確証のある資料だけにとどまらず、口伝など形になっていないものもできる限り集めます。

 

取材のなかで特に参考にしているのが激動期をどのように乗り切ったのかということです。オイルショック、リーマンショック、コロナ禍……、老舗であれば明治維新、第二次世界大戦、災害の多い日本での大地震、台風被害など、激動期に自分たちの事業を守るために取った策に、企業の考え方や姿勢、哲学が見えてくるからです。

 

第2ステップは「磨く」です。価値のキーワードを整理し、未来へつながるコンセプトへと磨き上げていきます。このステップでは、「調べる」で収集した情報からキーワードを徹底的に洗い出します。

 

膨大な数になることもありますが、歴史、精神、風土などの観点で分類し、特に重要なキーワードを絞り込んでいきます。それらを関連付けて物語を導き出し、言語化することがコンセプトメイキングの本質的な過程です。

 

コンセプトメイキングを行う際に重要なのは、クライアントとの徹底的な話し合いです。経営者をはじめとした会社のメンバーが「調べる」で見いだした価値を咀嚼し、「これが自分たちのコンセプトだ」と腹に落とすことが必要だからです。

 

こうして経営者や社員たちが腹落ちした価値観を、消費者が共感し愛着を持ち、好きになり、ファンになるような形でつなげることにより、ブランディングの全体を貫く軸としてふさわしいコンセプトに磨き上げていけるのです。

 

第3ステップは「魅せる」です。「調べる」「磨く」で導き出したコンセプトを、目的に合わせてパッケージやラベル、パンフレット、ウェブサイトなどの顧客接点となるツールに落とし込み、ブランドのイメージをつくり上げていきます。それぞれのツールから一貫したコンセプトが感じられることで、ブランドらしい世界観が消費者の頭の中に蓄積されるのです。

 

実は最もハードルが高いのが「磨く」から「魅せる」のステップへの移行、つまり概念であるコンセプトをデザインという形に落とし込む橋渡しの過程です。しっかり調べて素晴らしいコンセプトができたにもかかわらず、なかなか思ったようなデザインにならないことは珍しいことではありません。そのような状態になったときの改善策として考えられることが主に三つあります。

次ページデザインとして形にするためには……

※本連載は、株式会社第一紙行 ブランディング事業部の著書『地域と企業の未来を紡ぐ ルーツ・ブランディング』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部抜粋し、再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧