相続税の課税対象は、「価値があるものすべて」
相続税の課税対象となるものとは、土地や建物などの不動産のほか、現金、預金、有価証券が代表的です。しかし、その他にも経済的価値があるものすべてが対象財産となります。
たとえば、車などの動産で1つの資産が5万円超の財産は、相続税申告の際に個別に計上していかなければいけません。絵画や骨とう品など、価値があるものについても同様ですし、家庭用財産などの動産についても相続財産として申告する必要があります。
なお、ただし、それほど高価な家庭用財産がない場合には、「家財一式等」などとして10~50万円ほどを計上しておくのが一般的です。
Bさんは、出張で行ったイギリスでたまたま飲んだ「本場のウイスキー」に感動し、ドハマり。もともと凝り性だったこともあり、休日のたびにウイスキーの蒸留所巡りをするなど、ウイスキー収集が趣味となったようです。
日本に帰国してからもウイスキーに対する興味はとどまらず、ちょうどそのころから日本でも本格的な高級ウイスキーの製造が始まったことなどもあり、国内外問わずウイスキーを集めるようになりました。
Bさんには投資などの目的はなく、あくまでウイスキー好きが高じて長年収集を行っていましたが、近年の日本ウイスキーの注目度が高まったことなどから、所有していたウイスキーの評価額が上昇していたようです。
故人の資産は、税務署に把握されている
国税庁「令和4年事務年度における相続税の調査等の状況」によりますと、令和4事務年度(令和4年7月~令和5年6月)の相続税の調査件数は8,196件と、前事務年度から約3割となる1,879件増加しました。また、相続税の申告漏れ課税価格は前事務年度から400億円増の2,630億円となりました。
新型コロナウイルス流行の影響によりいったん減少した税務調査が、コロナ禍が落ち着いたことにより増加傾向にあることがわかります。
ではそもそも、相続税の税務調査対象はどのようにして選ばれるのでしょうか?
人が亡くなった場合、住所地の市町村長へ「死亡届」が提出されますが、そうすると相続税法第58条の法務大臣等の通知の規定により、所轄の税務署へ死亡の事実が通知されます。その際、亡くなった方が所有していた固定資産や住民税の課税所得等の情報もあわせて通知されます。
それらが届くと、税務署は該当の被相続人の生前の申告・納税の実績や、財産の内容などを「KSKシステム(国税総合管理システム)」に蓄積された膨大なデータによって確認します。KSKシステムとは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税の実績や各種の情報を入力することにより、各人の税金や財産の記録を一元管理するものです。
銀行や証券会社などとの取引内容も、金融機関から税務署に支払調書が送付されるため、ここに記録されます。つまり、被相続人の現金以外の財産はほぼ税務署に把握されていると考えてよいでしょう。
このため、生前の所得に比べ相続財産が少ないと判断された場合、なんらかの相続財産の申告漏れがあるのではないか? と、税務調査の対象に選ばれることもあります。
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