離れて暮らす母親を思い、仕送りを続けていたAさん
現在、54歳になるAさんは、東京で看護師として働いています。
幼少期に両親が離婚し、その後母親のもとで暮らしてきました。女手一つで育ててくれた母親の苦労を見てきたAさん。社会人となり、上京してからは、多くはない給料からなんとか捻出し、地方で一人暮らしをする母親に月5万円の生活費を送っていました。
母親が急逝したのは、Aさんが53歳になった頃でした。仕事に邁進していたAさんは、未婚だったので、たった一人の親を亡くし、深く悲しみました。しかし、ひとり娘だったAさん、悲しんでばかりもいられず、相続についての手続きに追われることとなります。
名義変更や手続きを進めていると、Aさんはあることに気がつきました。今まで送金していた1,800万円にも及ぶお金が、Aさん名義の通帳に手つかずのまま残っていたのです。
遺言書には、「これはあなたの名義にしてありますので、あなたがこれからのために使いなさい」との文言が。Aさんは母親の気遣いに感謝の気持ちが溢れます。
意に反してAさんのもとに戻ってきた1,800万円。元々は送金した本人のお金だったこともあり、申告の際には相続財産から除外することにしました。
申告書を提出してから1年がたった頃、Aさんのもとに税務署から「相続税の税務調査に伺いたい」との連絡が入ります。
たくさんの相続財産があったわけでもないのに、なぜかしら……と思いながら、Aさんは税務調査を受けることにしました。
私名義なのに…調査官から告げられた多額の追徴課税
和やかな雰囲気で始まった税務調査。遺言書や預金通帳をチェックし始めた調査官は「Aさんの預金通帳も見せていただいてよろしいですか?」と尋ねました。
なぜ母親の調査なのに私の通帳まで見るんだろう? と不思議に思ったAさんでしたが、特に断る理由もなかったため、調査官に差し出します。
調査官「こちらの通帳は、なぜ相続財産に含めてないのですか?」
Aさん「ああ、これは私がずっと送金していたお金なんです。母が私名義で口座を作成して、ずっと入金していてくれたみたいです。そんな口座を作ってくれていたなんて、全然知りませんでした。遺言書にも『あなたが使って』と書いてあって。私名義ですし、それにそもそも私が送金したお金だったので、相続財産には含めませんでした」
調査官「うーん。こちらも相続財産に含めて申告してもらうことになりますね」
Aさん「えっ! そんな……。これは、私のお金じゃないですか!」
税務調査の結果、この1,800万円は名義預金と指摘されてしまったAさん。300万円ほどの追徴税が課されてしまいます。
なぜAさんが送ったお金であるのにもかかわらず、追徴税を納めることになってしまったのでしょうか?
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