(画像はイメージです/PIXTA)

経済産業省はPMIを促進するための支援に取り組み始めています。その業務に必要な人材育成について、税理士・公認会計士の岸田康雄氏が解説します。

「PMI」業務に必要な人材育成

経済産業省はPMI支援に取り組み始めたが、都道府県レベルではまだ必要性を理解していない。中小企業のM&A(合併・買収)実施後の統合作業「ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)」業務は、単なる事業承継の枠を超え、中小企業が規模を拡大して生産性の向上を実現するための重要なプロセスだ。

 

PMI業務を普及させるためには、地方金融機関の広範な営業網と中小企業診断士の実務遂行力を組み合わせることが必要だ。両者の連携は地域に根ざした金融機関のネットワークを活用しつつ、企業の実態に即した支援を行うための理想的な組み合わせだろう。

 

だが、現状では地方金融機関にPMI業務を推進できる人材が少ない。タスク処理型の人材が多く、経営コンサルティングのように自ら問題を発見し、解決策を提案・実行できるスキルを持つ人材が不足しているのだ。人材不足により、中小企業が抱える問題解決が遅れ、生産性向上の取り組みが進展しない状況が続いている。

 

同様に中小企業診断士もタスク処理型の人材が多く、問題解決を行うスキルを持つ者は少ない。公認会計士や税理士などにも共通するが、専門的な知識を持つ者が必ずしも経営支援に直結するスキルを備えているわけではない。

 

しかし、それでも中小企業診断士には問題解決型を志向する人材が多く存在する。その多くが中高年層で高額報酬を求めないため、コストパフォーマンスが高い。この特性を生かし、適切な教育と研修を通じて、実践的な問題解決スキルを身につけた有能な人材を輩出する可能性は大きいはずだ。

 

ただ、中小企業診断士の活用にはボトルネックが存在する。主戦場となる行政機関の仕事が固定化していることだ。行政機関の窓口業務や専門家派遣の業務は過去につながりのあった一部の人に集中しており、中小M&AやPMIを支援する専門家には仕事が回りにくい。また、経済産業省はPMI支援の取り組みを始めたが、都道府県レベルでは、まだPMI支援の必要性が理解されていない。

 

こうした状況を打開するためには、民間の支援者である中小企業診断士が行政機関に依存せず、自ら地方銀行や信用金庫とのパートナーシップを築き、独自のネットワークを活用してPMI支援を普及させることが求められる。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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