トランプ政権で控除額が急拡大
遺産税制は2011年1月以降はブッシュ減税法施行前の従来の遺産税法に戻ることになっていたところ、2008年に発足した民主党のオバマ政権は2011年以降の遺産税を最高税率35%、基礎控除額を500万ドルに固定する恒久的な改正遺産税制法を成立させました。
2013年以降については2012年米国納税者救済法により、生涯控除額(基礎控除額)500万ドル、最高税率40%で推移しました。
その後、当時のトランプ大統領による2017年の税制改革法により、2018年1月以降は2025年までの時限措置として、生涯控除額が2倍の1,000万ドルに拡大され、さらに毎年インフレ調整されて、2019年1,140万ドル、2020年1,158万ドル、2021年1,170万ドル、2022年1,206万ドル、2024年1,361万ドルとなっています。
米国の基礎控除額は、税額に換算されて、遺産税の税額控除として計算されます。富裕層の支持者の多い共和党のブッシュ、トランプ大統領が、遺産税減税の法改正をするのは理解できますが、反対政党の民主党のオバマ大統領が、この流れを変える法改正を行っていません。バイデン大統領は、控除額を350万ドルに引き下げて45%の相続税が課せられることになる提案があるといわれていましたが、実現していません。
この背景としては、海外の富裕層を米国に誘致する政策なのか、その他に何か政策上の意図があるのかは不明です。IRSによる2030年までの遺産税の申告書数の予測値を見ても、今後、米国では遺産税の増税は予測されていないということがいえます。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員