米国の提出された遺産税の申告書数の推移
米国では、個人の膨大な数の確定申告書を含めて、申告書の収受および処理等のために、全米をブロック(旧称サービスセンター)に分けています。現在では、サービスセンターの名称がキャンパスに改められました。キャンパスに関する資料は、米国内国歳入庁(IRS)発行のPublication6186(以下「2023年改訂版」とします)に記載されています。
遺産税の日米比較ということで、以下は日本の相続税の申告事績で令和4(2022)年分資料です。
① 相続税の申告書を提出した被相続人数は15万858人
② 税額は2兆7,989億円
2023年改訂版によれば、米国のキャンパスが処理した遺産税申告書は2022年で3万9,000件、贈与税が同年44万1,000件です。
ブッシュ政権による遺産税を減税した前後の申告書数では、2002年(11万4,000件)、2003年(8万7,000件)、2010年(2万3,000件)、2011年(1万3,000件)と減税の効果が出ています。
遺産税申告書の2030年までの予測値
上記のIRSの文書は、1989年以降のキャンパスにおける過去の処理件数以外に、2030年までの申告書処理件数の予測値を掲載している。
遺産税申告書の件数は、2023年(3万5,600件)、2024年(2万200件)、2025年(1万9,400件)、2026年(1万8,700件)、2027年(1万7,900件)、2028年(1万7,100件)、2029年(1万8,300件)、2030年(1万5,600件)となっています。
米国の富裕者数は世界1位です。日本は2022年で申告書数約15万件で、米国の遺産税の申告書件数は日本の相続税申告書件数と比べると圧倒的に少なくなっています。それだけ遺産税で控除される人々が多いということを表しています。
2010年以降の遺産税の動向
米国の相続税の特徴は、遺産税と贈与税の統合移転税制ですが、この形態になったのは1976年の改正です。
そして、2001年1月に大統領に就任したブッシュ大統領は、就任当時下降気味の景気を刺激するために減税を柱とする税法の改正法案を米国議会に提出して成立させました(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001:以下「ブッシュ減税法」)。このブッシュ減税法が注目を集めた点の1つは、2010年までに米国が遺産税を暫時縮小して、2010年の1年限り課税を停止することを決定したことです。
米国の遺産税は、2002年には最高税率が50%あったものが、2009年に45%に引き下げられました。また遺産税の生涯控除額は、2002年と2003年が100万ドル、2004年と2005年が150万ドル、2006年から2008年までが200万ドル、2009年が350万ドル(統合税額換算額145万5,800ドル)と段階的に増額されました。そして、2010年の1年間に限り、遺産税とGST(世代跳躍移転税)は課税がなくなる予定でした。
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