(※写真はイメージです/PIXTA)

サッカーは集団競技の側面の強いスポーツです。よく比較対象になる野球も集団競技ですが、基本的にはターン制で攻撃と守備をチーム間で交代しプレイすることから、サッカーほど直接的なコミュニケーションの機会は少ないです。このことは、チーム内の会話を英語ではなく日本語の通訳を介して行なう、大谷選手のプレイスタイルを考えれば理解しやすいでしょう。このように同じ選手でも、サッカーと野球とで求められる「コミュニケーション能力」「英語力」が変わってきます。本記事では、英語コーチング・スクールを営む三木雄信氏が、その英語力の違いについて考察します。

世界の名将はマルチリンガル

このような野球とサッカーの違いが現れているもう一つの側面としてサッカーの監督の語学力もあります。

 

将として知られるペップ・グアルディオラは、2008年にバルセロナの監督に就任。初年度でチャンピオンズリーグ、ラ・リーガ、コパ・デル・レイの3冠を達成。その後、バイエルン・ミュンヘンでも国内タイトルを連覇。2016年からマンチェスター・シティを率い、プレミアリーグで複数回優勝、2023年にはチャンピオンズリーグ優勝を果たした。彼は、英語・スペイン語、イタリア語、ドイツ語を駆使することで知られています。

 

また、2023年からバイエルン・ミュンヘンの監督を務めているトーマス・トゥヘルは、マインツで監督キャリアを開始し、パリ・サンジェルマンではリーグ優勝とチャンピオンズリーグ準優勝を達成。2021年にチェルシーを率いてチャンピオンズリーグ優勝を果たしています。彼も英語・スペイン語・フランス語、ドイツ語を話すのです。

 

このようなサッカーの名監督は様々な国から集まった様々な言語を話す選手とピッチサイドで額を突き合わせて、直接指示を出しています。やはり通訳を介してでは伝わりきれない要素があるからと考えられます。このことからもサッカー名監督の要件としてマルチリンガルであることと言えるでしょう。

9月シリーズの立役者は長谷部誠

実は、9月シリーズでのサッカー日本代表に起きた変化の一つに長谷部誠のコーチングスタッフ就任があると私は思っています。いうまでもなく、ドイツのヴォルフスブルク、フランクフルトで活躍。ブンデスリーガ優勝を経験し、日本代表としてもキャプテンを務め、ワールドカップに3大会出場の名選手です。

 

長谷部は英語に加えてドイツ語を流暢に話すことが知られています。彼はフランクフルトで指導者を目指し2024年9月からフランクフルトII(U-21)のアシスタントコーチに就任しています。同時にサッカー日本代表のコーチングスタッフにも就任。

 

こうした日本代表の選手だけでないさらなる国際化によって、海外組のサッカーの戦術の共通理解と浸透がサッカー日本代表の原動力になっているのです。

 

サッカー日本代表は、11日午前3時(日本時間)サウジアラビアと対戦します。期待したいと思います。

 

三木 雄信

英語コーチングスクール「TORAIZ」代表

 

1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部経営学科卒。三菱地所(株)を経てソフトバンク(株)に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏のもと、多くの米国IT企業とのジョイントベンチャーのプロジェクト、「ナスダック・ジャパン設立」「日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)買収」「ソフトバンクの通信事業参入」などのプロジェクトで、プロジェクト・マネージャーを務める。

トライズ株式会社代表、2015年に英語コーチング「TORAIZ(トライズ)」を開始。日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。

著書に、『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』(東洋経済新報社)、『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)、『【新書版】海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』『ムダな努力を一切しない最速独学術』(ともにPHP研究所)ほか多数。

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