65歳のRさんは、2人きょうだいの妹。亡くなった父の会社を引き継いだ兄に対し、実家から離れた場所に嫁いだ彼女は子育てに励んでいました。そんな中、施設に入った94歳の母を訪ねようとしたところ、施設は「お兄さんから(Rさんには)会わせるなと言われているので会わせられません」の一点張り。どうやら財産の独り占めを狙う兄が、一向に母親に会わせまいとするのです。せめて母が元気なうちにもう一度会っておきたいRさん……。彼女がとれる対策について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、弁護士からの回答もあわせて詳しく解説します。
母親に会わせてもらえない!?
相談に来られたRさんは、兄と2人きょうだいの妹です。地方都市に住む父親は建築関係の会社を創業し、3つ上の兄も父親の会社で一緒に仕事をしていました。
当然ながら、父親が亡くなった際は兄が会社を継ぎました。一方、Rさんは実家から飛行機で行かなければならない距離のところに嫁いだので、父親の会社を手伝うこともできず、会社周りのことは兄夫婦に任せてきました。
父親が亡くなったのは10年前。遺言書はなかったので、母親と兄、Rさんの3人で遺産分割協議をしなければなりませんでした。しかし、兄がすべて取り仕切って手続きをしましたので、母親もRさんも言われるまま実印を押し、印鑑証明書を渡したとのことでした。
兄は父親の会社を継いでいますので、会社関係の土地や株を相続し、母親の住む実家も相続。母親とRさんには上場株と現金を渡した程度で済ませました。
それだけでも兄の横暴さがわかりますが、Rさんの相談というのは、「兄が母親に会わせてくれないので、方法はあるか」ということでした。
母親は現在94歳。父親が亡くなった頃は元気でしたが、80代半ばを過ぎた頃に骨折をして入院することに。入院中はRさんも定期的に通って母親の様子を見てきましたが、病院でのリハビリをしたうえでも、いままでの自宅での一人暮らしには戻れないという判断で、介護施設に入所しました。
しかし、母がどこの施設に入ったかについては兄はいっさいRさんに教えてはくれませんでした。
兄から止められているので会わせられない
実はRさんは子どもの受験や行事等で1カ月ほど病院に行けないことがありました。ようやく時間が作れて母親が入院する病院に行ったところ、すでに母は退院したあとでした。
愕然としたRさんでしたが、「お兄さんに口止めをされているので」と、病院も母がどこの施設に移ったかは教えられないと言うのです。それもでもなんとか食い下がったRさん。なんとか施設名と場所を聞き出すことができました。
その足で施設に行ったRさんですが、今度は施設側が「お兄さんから(Rさんには)会わせるなと言われているので会わせられません」との一点張り。兄にも連絡しましたが、「とにかく会わせられない」と許可をしてくれず。
それから現在まで約4年。コロナの期間も影響はしていますが、いまだに母親に会えずじまいだといいます。母親は94歳。人生100年時代とはいえ、いつ相続になってもおかしくない年齢です。亡くなる前にもう一度会っておきたいというのがRさんのご希望でした。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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