愛妻家の父は、母なきあと、ひとり思い出の家に暮らしていると思ったら…。中年のきょうだいに降りかかった、父の再婚に伴う相続トラブル。しかし、解決は、意外な着地となりました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。
1人暮らしの高齢父からの、突然の呼び出し
今回の相談者は、50代の山田さんです。70代の父親と、父親の再婚相手が続けて亡くなったことで困ったことになっていると、筆者のもとを訪れました。
山田さんは長女で、3歳年下の弟と2人きょうだいです。父親は10年前に妻(山田さんきょうだいの母)を亡くし、1年半年前に再婚したとのことでした。
「私たちの両親はとても仲がよく、父は母を亡くしてからもずっと実家で、母が好きだった花を植えるなどして、静かに暮らしていました。将来、年齢を重ねてひとり暮らしがむずかしくなったら、私か弟の家に引き取ろうと、きょうだいで話し合っていたところだったのですが…」
1年半ほど前、山田さんと弟は、突然父親から電話で呼び出されたといいます。
「なにか深刻な病気でも判明したのか、それとも相続の話か…と、弟と不安になりながら実家へ向かいました」
見慣れないピンク色の軽自動車に、女性ものの靴…?
ところが、実家の前庭には、見たことのないピンク色の軽自動車が止まっており、玄関には女性の靴が揃えてあります。
「弟は〈なにかの営業じゃないの…?〉と小声で言っていましたが、リビングに入ると、知らない女性が父にピッタリと寄り添っているじゃないですか…!」
山田さんと弟があっけに取られていると、女性は立ち上がり、深々と頭を下げた。
「すると父が女性を守るように立ち上がって〈お父さん、この人と再婚することにした〉と…。年齢を聞いたら、娘の私と10歳も年が離れていないんです。もう、言葉を失いましたよ…」
とはいえ、結婚は大人が自分で判断することです。いくら子どもたちが結婚に反対したところで、本人同士の決意が固ければどうしようもありません。結局父親は「天涯孤独」だという女性と再婚しました。
「私たちが育った両親の家が、両親の家でなくなってしまう。弟も私も40代、50代で、自分の家庭もあるいい大人なのですが、正直動揺しました」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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