65歳のRさんは、2人きょうだいの妹。亡くなった父の会社を引き継いだ兄に対し、実家から離れた場所に嫁いだ彼女は子育てに励んでいました。そんな中、施設に入った94歳の母を訪ねようとしたところ、施設は「お兄さんから(Rさんには)会わせるなと言われているので会わせられません」の一点張り。どうやら財産の独り占めを狙う兄が、一向に母親に会わせまいとするのです。せめて母が元気なうちにもう一度会っておきたいRさん……。彼女がとれる対策について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、弁護士からの回答もあわせて詳しく解説します。
「兄が母親に会わせない行為は妹の権利を侵害する行為にあたる」弁護士の見解
今回のRさんのケースについて、夢相続の業務提携先の弁護士法人に確認したところ、以下のような回答が得られました。
「妹が母親に会う権利があるかについては、母親の意思や状況にもよりますが、母親が高齢で介護が必要な状態にある場合、子供が必要な介護をするために面会交流を希望することは当然のことです。明らかにに母親の意思に反していたり、母親の平穏な生活を侵害する虐待があったり、母親の権利を不当に侵害するものでない限り、子どもは母親に面会する権利があります。つまり、妹を母親に会わせることが、母親の権利を不当に侵害するものでない限り、兄が母親に会わせない行為は妹の権利を侵害する行為にあたる可能性があります」ということです。
今できる法的手続きなどはあるのでしょうか?
「現時点で、できる法的手続きとしては、話し合いが可能なのであれば、まずは『親族関係調整調停』を申し立てることが考えられます。しかし、調停での話がうまくいかない場合、そもそも調停での話し合いが難しい場合などは、妹が母親に会える権利を前提とした、兄に対して『侵害行為の妨害排除請求』、または、『妨害予防請求』の裁判を申立てることが考えられます」
「ただ、裁判には時間がかかりますので、上記『妨害排除請求』または『妨害予防請求訴訟』を申立てることを前提として、仮地位の仮処分を申立てることが現実的でしょう。
仮処分とは、訴訟での解決を待っていたのでは権利を保護することなどが難しい場合に暫定的に権利を認めるもので、訴訟に比べて手続きが早く進み、訴訟で実現するのとほぼ同様の請求を実現できるというものです。実際に母親に会わせてもらえない子どもが申し立てて仮処分が認容されているケースもあります」
上記が弁護士からのアドバイスですが、今でも方法があることをRさんにお伝えしました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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