目が回る忙しさです…術後患者の様子見、車椅子事故を防ぎ、複数患者の食事介助・歯磨きを同時進行。“高齢化社会の看護師”の理想と現実【医学博士が解説】

目が回る忙しさです…術後患者の様子見、車椅子事故を防ぎ、複数患者の食事介助・歯磨きを同時進行。“高齢化社会の看護師”の理想と現実【医学博士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人命を預かるという点で、特に責任が重く、ミスが許されないプレッシャー下で働く看護師たち。高齢化が進み医療現場の逼迫が進み、患者の個々の状態に合わせた医療が重視されるようになるなか、看護師の業務量は増える一方です。本記事では、青柳智和氏の著書『看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部抜粋・再編集し、看護師の実態について、解説します。

やりたい仕事ができない看護師の本音

私は25年を超える看護師歴を持ち、今は職場で後輩を指導する立場にあるほか、キャリアアップを目指す看護師向けの講演や研修も手掛けています。こうした場を通じて、多くの看護師からさまざまな仕事上の相談を受けたり、悩みを打ち明けられたり、時には愚痴の聞き役にもなったりしてきました。

 

休みがとれない、職場の人間関係がぎすぎすしている、体がしんどいなど、理不尽な思いを抱えながら一日いちにちをなんとか乗り切っている、そんな看護師のやりきれなさを聞くことも少なくありません。

 

病棟では、手術後の患者の様子を見ながら、別の認知症の患者が車椅子から落ちないよう目配りし、さらにほかの複数の患者の食事介助をし、歯磨きもして、と目が回る忙しさです。こういう状況で誰かが急変したら処置に付きっ切りになり、ほかの患者を待たせてしまうことにもなります。師長から、看護記録は仕事の合間に書いて、できるだけ残業しないように、と言われてもとてもそんなことはできず、書類仕事は後回しになってしまいがちです。

 

個々の病院によって事情は違うと思いますが、例えば調剤薬局で薬剤師が行うような薬の説明や管理も、病棟に薬剤師が常駐していることは少ないため、看護師の役割になることが多いと思います。嚥下機能が低下した患者への嚥下訓練も病棟で看護師が食事の際に行うことがありますし、リハビリも当然看護師は介入します。

 

そんな日常の繰り返しに心身をすり減らし、ついにはバーンアウトしてしまうこんな働き方でいいわけがありません。

 

看護師の理想と現実

医療機関(病院・診療所)で働く看護師の誰もが、ほかの医療職と協業しながら患者の命を救うこと、患者が病気を克服し退院できるようにすることが使命であると分かっているはずです。しかし現実には、そこになかなかフォーカスできず、ただただ目の前の業務に忙殺されているのが現実です。

 

しかし一方で、みな看護の仕事が好きで、患者が好きで、患者や家族から感謝されると天にも昇るほどうれしいという気持ちも痛いほど感じます。涙ぐんで延々と窮状を訴える人でも、ひととおり話せば最後は「でもね、患者の笑顔を見るともうちょっと踏ん張ろうと思うんですよ」と自分に言い聞かせるようにポジティブな言葉を残し、職場へ戻っていくものです。感謝されることが仕事の原動力になっており、忙しくても、つらくても、それが患者の役に立つことなら進んでやりたいと誰もが思っているのです。

 

高齢化とともに患者の看護負担が増え、多疾患併存に翻弄されるなど、現場を支えている看護師がさまざまな問題に日々心身をすり減らしていることは事実です。ただそんな状況のなかで、もしも本来やりたかった看護の仕事に集中できるなら、同じくらい忙しくてもやりがいにつながるのではないかと私は考えています。

 

実際に看護師が本来の力を発揮し理想の看護を実践していける土壌は整いつつあります。超高齢社会に突入した日本の医療を支える救世主として、看護師がより一層活躍する時代がやってきたのです。

 

 

青柳 智和

医学博士

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

 

注目のセミナー情報

【国内不動産】10月24日(木)開催
金利上昇局面に対応!銀行からフルローンを引き出す
「最新不動産投資戦略」利回り7%超!「新築アパート投資」セミナー

 

【事業投資】10月25日(金)開催
大手企業も続々参入中!
日本政府が推す〈次世代エネルギー事業〉
今はじめたい「系統用蓄電所投資」の魅力

 

【海外不動産】10月26日(土)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!
ベトナム不動産投資セミナー

※本連載は青柳智和氏の著書『看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割』(幻冬舎メディアコンサルティング)の中から一部を抜粋・再編集したものです。

看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割

青柳 智和

幻冬舎メディアコンサルティング

急速に進む超高齢社会と医師不足、医師の偏在という課題に直面する医療現場では、看護師の役割拡大が急務となっています。これまで看護師の役割は、患者の症状に異変が生じた際に医師の処置を補助するというものでした。しかし…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧