やりたい仕事ができない看護師の本音
私は25年を超える看護師歴を持ち、今は職場で後輩を指導する立場にあるほか、キャリアアップを目指す看護師向けの講演や研修も手掛けています。こうした場を通じて、多くの看護師からさまざまな仕事上の相談を受けたり、悩みを打ち明けられたり、時には愚痴の聞き役にもなったりしてきました。
休みがとれない、職場の人間関係がぎすぎすしている、体がしんどいなど、理不尽な思いを抱えながら一日いちにちをなんとか乗り切っている、そんな看護師のやりきれなさを聞くことも少なくありません。
病棟では、手術後の患者の様子を見ながら、別の認知症の患者が車椅子から落ちないよう目配りし、さらにほかの複数の患者の食事介助をし、歯磨きもして、と目が回る忙しさです。こういう状況で誰かが急変したら処置に付きっ切りになり、ほかの患者を待たせてしまうことにもなります。師長から、看護記録は仕事の合間に書いて、できるだけ残業しないように、と言われてもとてもそんなことはできず、書類仕事は後回しになってしまいがちです。
個々の病院によって事情は違うと思いますが、例えば調剤薬局で薬剤師が行うような薬の説明や管理も、病棟に薬剤師が常駐していることは少ないため、看護師の役割になることが多いと思います。嚥下機能が低下した患者への嚥下訓練も病棟で看護師が食事の際に行うことがありますし、リハビリも当然看護師は介入します。
そんな日常の繰り返しに心身をすり減らし、ついにはバーンアウトしてしまうこんな働き方でいいわけがありません。
看護師の理想と現実
医療機関(病院・診療所)で働く看護師の誰もが、ほかの医療職と協業しながら患者の命を救うこと、患者が病気を克服し退院できるようにすることが使命であると分かっているはずです。しかし現実には、そこになかなかフォーカスできず、ただただ目の前の業務に忙殺されているのが現実です。
しかし一方で、みな看護の仕事が好きで、患者が好きで、患者や家族から感謝されると天にも昇るほどうれしいという気持ちも痛いほど感じます。涙ぐんで延々と窮状を訴える人でも、ひととおり話せば最後は「でもね、患者の笑顔を見るともうちょっと踏ん張ろうと思うんですよ」と自分に言い聞かせるようにポジティブな言葉を残し、職場へ戻っていくものです。感謝されることが仕事の原動力になっており、忙しくても、つらくても、それが患者の役に立つことなら進んでやりたいと誰もが思っているのです。
高齢化とともに患者の看護負担が増え、多疾患併存に翻弄されるなど、現場を支えている看護師がさまざまな問題に日々心身をすり減らしていることは事実です。ただそんな状況のなかで、もしも本来やりたかった看護の仕事に集中できるなら、同じくらい忙しくてもやりがいにつながるのではないかと私は考えています。
実際に看護師が本来の力を発揮し理想の看護を実践していける土壌は整いつつあります。超高齢社会に突入した日本の医療を支える救世主として、看護師がより一層活躍する時代がやってきたのです。
青柳 智和
医学博士
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