妻が「家計の異変」に気づけなかったワケ
筆者はA夫婦から一連の話を聞き、気になるところがありました。それは、A家の家計管理方法についてです。
A家は、夫婦の収入から毎月支出に必要な分を、あらかじめ家計用に作った共通口座に入れて管理していました。しかし、この口座は長年Aさんが管理しており、退職金についてもAさん個人の口座に預金していたため、妻が老後のための生活資金が減っていることに気づくのが遅れたようです。
現在、A家の毎月の収入は、Aさんの年金と妻のパートを合わせて約26万円です。その一方で、毎月の支出は、Aさんの現役時代と変わらず月35万円。ここに先述のサウナ代やギャンブル代が加われば、貯蓄が減っても致し方ありません。
筆者は、家計は妻に一任することとし、まずAさんは治療に専念してもらうことを提案しました。そして、少しずつ携帯電話の通信費や保険料、サブスクリプションの料金といった固定費を見直し、現在の収入に合った支出額の削減を行うよう助言しました。
後日談
後日、Aさんが再び事務所にみえて、その後の様子について話してくれました。A夫婦は筆者の提案どおり家計を見直したほか、Aさんは同じ悩みを抱える人たちが定期的に集まる「自助グループ」に通い始めたそうです。
「自分は大丈夫だと思い込んでいましたが、まさか病気だったとは……。ギャンブルにハマることは恥ずかしいことだと内心後ろめたい気持ちもありましたが、自助グループに行ってみたら同じ悩みを抱えた仲間がいると知り、安心しました。しっかり自分と向き合い、これからは妻や子どもたちを困らせることのないように改心します」と、Aさんは語ってくれました。
消費者庁によると、ギャンブル依存症を発症する際は、「家庭行事を顧みなくなる」「金銭的事情について暴言を吐く」など、さまざまな兆候が表れるようです。
自身や家族がこうした兆候に気づいたら、ためらうことなく専門の医療機関を受診するとともに、今回のA夫婦のように、家計を守る手段の検討が重要です。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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