「食べない日をつくれば帳尻が合う」と考えていた父
「今晩はパン1個で我慢するよ」
長女の香織さん(仮名・46歳)が夕食に誘うと、父の修一さん(仮名・74歳)はそう断りました。
修一さんは妻を5年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約17万円で、住宅ローンを完済したマンションに住んでいます。
香織さんは、父が年金の範囲内で問題なく暮らしていると思っていました。ところが、最近は食事の誘いを断ることが増え、電話でも「昼をしっかり食べたから、夜はいらない」と話すようになります。
心配になった香織さんが実家を訪ねると、冷蔵庫に入っていたのは食パン、卵、豆腐、値引きされた総菜だけでした。
「魚や肉は買わないの?」
「高いからな。毎日食べなくても困らないよ」
修一さんの年金からは、税金や社会保険料が引かれます。マンションの管理費と修繕積立金が月約3万5,000円、光熱費と通信費が約2万円。高血圧などの通院にも毎月1万円前後かかっていました。
さらに、築年数の経過に伴って修繕積立金が上がり、前年には給湯器の交換で約20万円を支出しています。預貯金は約600万円ありますが、今後の医療や住まいの修繕を考え、できるだけ減らしたくないと話しました。
最初にやめたのは外食です。その後、刺身や牛肉を買わなくなり、総菜も値引きされる時間帯を待つようになりました。それでも月末にお金が足りないと感じると、夕食を食パン1個で済ませていたのです。
「1食抜けば、数百円は使わずに済む。月に何日かそうすれば、赤字にならないと思っていました」
総務省『2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均』によると、総合指数は前年比3.2%上昇しました。物価上昇が続けば、同じ金額で購入できる食品やサービスは少なくなります。
また、総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円、消費支出は14万8,445円。平均では毎月の支出が手取り収入を上回っています。
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