事業承継において起こりうる「トラブル」
「事業承継」と端的にいっても、会社の状況によって、起こりうるトラブルと対策は異なってきます。
以前は、事業承継といえば親族への承継が多数を占めていましたが、近年は親族以外への承継も増えてきています。
[図表1]をみると、親族への承継が減少傾向にあり、
・従業員が内部昇格によって承継するケース
・外部の人が承継するケース
が増えていることが読み取れます。
後継者が親族の場合であっても、親族以外であっても、いずれにせよ事業承継の際は後継者の経済的負担を軽くしてあげることがもっとも重要です。トラブルを回避するためには、なにが問題になりそうなのかあらかじめ知っておくことが肝要です。
後継者が親族(法定相続人)の場合、起こりうるトラブルは下記の4点です。
■相続での株式承継を行う場合
……相続税を納税する資金が必要
■生前贈与での株式承継を行う場合
……贈与税を納税する資金が必要
■株式以外の相続財産が少ない場合
……後継者が他の法定相続人から「相続分」または「遺留分※1」を主張され、「代償交付金※2」の支払いが発生する
■後継者の社会的信用がまだない(少ない)場合
……運転資金の融資が難しくなるケースがある
※1 遺留分……法定相続人の最低限の取り分のこと(兄弟姉妹を除く)。
※2 代償交付金……相続財産のなかに土地や株式などの“分けられない財産”がある場合、その財産を相続した者が他の法定相続人の相続分・遺留分を得させるために支払うお金のこと。
他方、後継者が従業員など親族以外(法定相続人以外)の場合、起こりうるトラブルは下記の3点です。
■無償譲渡の場合
……後継者が贈与税の納税資金が必要となる
■後継者が法定相続人から「遺留分」を主張される
……賠償義務を負う可能性がある
■後継者の社会的信用がまだない(少ない)
……運転資金を融資してもらうのが難しくなるケースもある