「管理会社では入居者を探さない」ほうが合理的!?
やはり今の時代、能力の優れた管理会社の定義は「空室をどれだけ埋められるか、きちんと入居付けができるか」、そのために「物件の特性から賃借人となるターゲット層を絞り込み、集客のための施策を打てるか」という点になります。
オーナーに対してきちんとした合理的な説明や提案をしてくれるのが優秀な管理会社といえます。「熱意に押されて管理を任せてみたところ、たしかに管理はしてくれるけど、空室を埋めてくれない」と嘆くオーナーさんは少なくないです。
提案といえば家賃の値下げや、お金のかかるリフォームばかり。オーナーのコスト負担で物件の収益力を改善させるのは、あくまでも最終手段です。まずは募集に対してきちんと「合理的な提案」ができる業者と付き合うべきです。
では、筆者が考える「合理的な提案」とはどういったものなのか。それは基本的に「自社では入居者さんを探さない」ことを、まずオーナーさんにお伝えします。こう聞くと不安に思われる方もいるかもしれません。
首都圏には賃貸仲介専門でやっている不動産業者があります。彼らの強みは「管理は一切しないし、売買も一切しない」、その代わりに賃貸仲介業務だけに特化した組織づくりをしている点です。人材教育も仲介に絞って行いますし、会社の制度や仕組みが、そうつくり込んであります。ホームページや宣伝広告にも大きな予算をかけています。
彼らは手間を惜しまず、自社のホームページや不動産情報のポータルサイトにマメに募集を出しています。たとえ他社と同じ物件を掲載するにしても、自社に来てもらえるようなキャッチコピーを考えたり、物件写真を自分たちで撮り直したり、更新日付を工夫して上にくるようにしたりしています。
オプション料金を払えば検索結果画面で上位表示させることできるので、ポータルサイトにお金を払うことで、自社に入居者を取り囲めるようにしています。
ですから、管理会社がスーモに物件掲載して「客付けを頑張っています」とオーナーにアピールするより、そこは営業力に優れた業者さんにお任せして、その会社のネームバリューで客付けしてもらったほうが、結果的に入居者さんが早く見つかります。
どの客付け業者に任せれば早く空室が埋まるのか?
街の客付け業者さんと正面から張り合うよりは、良い関係を持つべきです。筆者の会社では募集する物件ごとに、特徴を捉えてお願いする業者を代えています。
前回の、大田区の新築アパートの空室が埋まらなかったのは、管理会社が仲介会社に合わせるという発想がないことも原因です。私たちは仲介会社との関係づくりはかなり柔軟に対応しています。
例えば、品川のエリアだったら、五反田の駅前の仲介業者さんに専任でお願いすることがあります。この場合、募集には筆者の会社の名前は一切出てきません。この条件を業者さんに伝えると、その業者さんにとって、「完全お抱え物件」と認識してもらえるので、優先的に客付け活動してもらえます。
五反田駅前というのは、1棟当たり百何十世帯もあるワンルームマンションが複数あって、いずれも築年数の古い物件ばかりです。当然、旧耐震の物件で、広さも15平米と広くありません。そんな物件の一室を区分所有しているオーナーさんから弊社に管理の依頼がありました。募集状況を確認すると、すでに同じマンション内で14〜15件の募集が出ている状況で、いずれも似たような賃料帯での募集でした。
オーナーさんのためにも、募集している物件の中ではなるべく高めの賃料で、相場の上限を狙った募集をかけたのですが、最初に決まったのがこの物件でした。これこそ物件の力ではなく、仲介業者の力で有利な客付けができた一例です。
ここで筆者の会社について、少し説明させてもらうと、客付けに関する仲介手数料やインセンティブは一切いただいておりません。「もしオーナーさんがそういった予算を工面できるのなら、それは客付け業者さんに渡してください」とお伝えしています。
もちろん仲介手数料をいただかないからといって、業務で手を抜いているわけではありません。客付け業者が苦手な事務仕事や、審査関係は全部弊社が引き受けています。契約書の作成も全部筆者の会社が行い、客付け業者さんには営業に専念してもらいます。見つけたお客さんに対して、いかに早く審査結果を出すか、その方に対して、きちんと保証ができる管理会社をつけるといった審査は筆者の会社が責任を持って行っています。