各行政から家賃が支払われるため、「滞納」の心配はない
失敗事例6 生活保護受給者ばかりのアパート
大学から徒歩圏のアパートを購入しました。単身者向けの間取りのため、学生向けの物件を購入したつもりだったのですが、購入後に生活保護受給者ばかりが入居していることを知りました。
具体的な失敗談はないのですが、管理会社に聞いたところ、空室がなかなか埋まらないため、前オーナーが生活保護受給者の入居を積極的に進めたそうです。すると、既存の一般入居者が退去してしまい、今ではほとんどが生活保護受給者になってしまったそうです。
購入の際に管理会社の変更を検討したのですが、生活保護受給者を取り扱ってない会社もあるようで、希望通りの会社にお願いできませんでした。やはり、それだけリスクが高い入居者ということでしょうか。しっかりと確認していない自分が悪いのですが、生活保護受給者を対象にしたアパートのメリット・デメリットを知りたいです。
高利回りで売られている中古物件には、それなりの理由があります。とりわけトラブルが起こりやすい物件は、よりシビアに見ないといけません。
最近、相談を受けた例では、購入した物件が生活保護受給者ばかりが入居していたというケースがあります。
生活保護受給者に対して支払われる家賃補助を住宅扶助といいます。一般的に「生活保護を受けなくてはいけないほど困窮した人」ということで敬遠する不動産オーナーも多いのですが、住宅扶助は各行政から支払われるものですから、「むしろ家賃滞納もなく安心だ」と考える不動産オーナーもいます。
そのため、地方にあるにもかかわらず駐車場がなく、狭小間取りの物件を所有するオーナーが、あえて生活保護受給者を対象にしていることもあります。その場合は、部屋は狭くても家具・家電が用意されていたり、公共の交通機関が使いやすいといった、生活保護者にとっても使い勝手の良い条件を備えます。
また、住宅扶助の上限は各市町村によって変わりますから、金額をしっかり確認する必要があります。
気をつけたい点もいくつかあります。役所から直接家賃を受け取ることができる「代理納付制度」を利用すれば、一般の方に入居いただくより安心感があります。
しかし、市町村によっては住宅扶助が生活保護者の口座にいったん振り込まれ、そこから家賃が支払われるケースがあります。代理納付制度が役所からの定期振り込みということで安心ですが、保護者からの支払いであれば遅延や滞納の恐れがあります。
生活保護の受給金額が減額される可能性に注意
また、生活保護では各市町村によって家賃の上限が定められていますが、昨年の7月に、内容の見直しがあり段階的な引き下げが決まりました。
具体的な見直しの内容は以下となります。
・住宅扶助上限額の見直し
全国各地域における家賃実態、近年の家賃物価の動向を反映したもの
・区分の見直し
世帯人数区分、人数別の上限額、地域区分の見直し
・一人世帯における床面積別の住宅扶助上限額の新設(緩和措置有)により、床面積が15平米以下の場合に減額
東京都23区では、2人入居で6万9800円だったところ、6万4000円に引き下げられます。
そういった事情を知ったうえで生活保護受給者を対象にするのであればいいですが、上限が下がったということで退去されてしまうリスクもあります。
【図表】生活保護「住宅扶助基準額」の見直しについて
もう一点は、生活保護者の多くは高齢で病気を持っているため、働けない……といったケースが多数ですが、中には精神疾患やアルコール依存症などで、大きな声を出す、暴れるといった、他の入居者への迷惑行為を行う方もいます。一棟すべてが生活保護受給者であれば、お互い様ということで理解も得られると思われますが、一般の入居者と混在であれば、クレームにつながる可能性もあります。
そのほかのケースでいえば、生活保護の不正受給が見つかり、途中から生活保護を受けられなくなった入居者もいました。この場合は、家賃滞納をする恐れがあります。
「一度、入居したらなかなか退去はしない」と言われる生活保護受給者ですが、これだけの不安材料もあるのです。