管理会社も物件も問題なし――なぜ空室が続く?
失敗事例1 大手の会社に依頼しても空室が埋まらない
大田区の某私鉄駅から徒歩圏に新築アパートを購入したのですが、竣工後3カ月経っても空室が埋まらず、内見すら入らない状態で困っています。財閥系大手の管理会社に任せていますが、まったくレスポンスがありません。募集家賃は6万3000円で、物件の間取りは13平米と狭いものの、都内新築物件としては適正の範囲内だと思います。
オーナーの最大の悩みは「空室が続くこと」です。空室が埋まらない限り、想定していた家賃収入も絵に書いた餅となります。ひと口に空室といってもその原因をひもとくと、単純な努力不足なのか、オーナーさんの知識がないのか、管理会社にやる気がないのか、賃貸ニーズがないのかと、さまざまな原因が複合しています。
原因が管理会社そのものにあるのなら問題点が可視化できますが、難しいのは、一見きちんとした管理会社を選んでいるにもかかわらず、空室が埋まらない場合です。この場合、「物件と管理会社がミスマッチを起こしている」可能性が考えられます。
この失敗例では、結論からいえば、筆者の会社に管理を移していただいて改めて募集したところ、募集条件をいっさい変えず、賃料そのままで1カ月足らずで満室となりました。「募集条件は同じなのに、管理会社を代えただけで空室が埋まるなんて」とオーナーさんも大変驚かれていました。
入居者の属性に合った管理会社を選ぶことが必要
さて、この問題の原因は何だったのかというと、今回のアパートはいわゆる狭小物件で、どちらかというと属性の高くない人たちをメインターゲットとしている物件です。大田区に多い中小企業に勤めている人や、フリーターの入居が圧倒的に多いのです。
しかし、当初物件を管理していた大手管理会社は属性の低い人に対する審査基準やノウハウを持っていなかったのです。その会社が管理している他の物件を見るとよくわかります。募集物件の多くが、自社で販売した一等地に建つ分譲マンションであり、物件購入者からの「転勤で住めなくなったので貸し出したい」といったニーズに対応するため管理業務を受けるケースが多いのです。つまり、この物件のメインターゲットとはかけはなれた高級賃貸物件をメインとしている管理会社だったのです。
たまたまそのオーナーさんは、以前に別の物件のマンション管理をお願いしたことから、今回の新築アパートもそのまま管理をお願いしたとのことでした。管理会社側も、これまでのお付き合いもあるので断らずに受けたのでしょう。こうした経緯から、物件が持つニーズと管理会社の得意分野がミスマッチを起こし、空室期間が長引いていたのです。これはオーナーさんにも管理会社にも双方にとって不幸なケースと言えます。
今回のような物件で入居者付けの主力となるのは、ターミナル駅前にあるような、「客付け専門の賃貸仲介会社」です。賃貸のメインターゲットとなる若者の賃貸需要をしっかりキャッチして、適した物件を紹介してくれる心強い存在です。客付け能力は高いのですが、中にはイケイケな業者さんや、元気だけが取り柄のような業者さんもいて、営業力だけに特化した業者さんも少なくありません。
その他の失敗例でいえば、駅前の一等地に路面店が多数あるような大手不動産チェーンを管理会社にしたケースがあります。オーナーからしたら、大手で店舗数も多く安心感があるのですが、なかなか入居が決まりません。
その理由は多くの大手不動産チェーンでは、自社で物件情報の囲い込みをしているケースがあるからです。レインズにも出さないし、スーモやホームズといった不動産ポータルサイトにも情報を出しません。物件にもよりますが、基本的には自社のホームページだけに掲載して、そこで集めるお客さんしか付けてくれません。
大手では自社が管理する物件やサブリース物件が最優先されます。課せられた数字に対するプレッシャーも強いので、これは仕方ない面もあります。