リフォームしたからといって空室が埋まるわけではない
失敗事例8 リフォームはどこまでお金をかけるべきか
都内23区に区分マンションを所有しています。退去の後に原状回復工事を行いますが、かかっても20万円くらいです。これが管理会社からの提案で物件も古くなったということで100万円かけて水回りを修繕することになりました。
結果でいえば、リフォーム後に入居がすぐに決まったのですが家賃は同じままです。100万円かけてリフォームせずに、家賃を下げれば良かったのではないか、今になって後悔しています。
入居者が決まらない空室に対して、「部屋が悪い」と言われてリフォームを提案されたことがあるオーナーもいることと思います。そういう提案をどこまで受け入れるかは難しい問題です。すべてを「やります」と言っていたら、かかる費用は原状回復どころではありません。例えば、「フルリノベーションしましょう」という話になれば、何百万円もかかります。
リーシング計画に伴うリフォームであれば、「リフォームしたら、本当にお客さんが付くのか」という問題があります。業者は提案した以上「付くと思いますよ」と答えますが、そもそも根拠がいい加減だったりします。
そこで別のA社に聞いたら「これは完全にキッチンを交換しないとだめです」と言われたり、リフォームに詳しいBさんに見てもらうと「2DKの間取りなので、壁を全部ぶち抜いて、広い1LDKにしたほうがいい」と言われる。
さらにC社からは「直さなくても入居条件や家賃を変えれば付くだろう」と言われ、D社に聞いたら、「そこまで費用のかかるリフォームはする必要はないけど、壁紙だけ変えたほうがいい」と言われる。とにかくいろいろ言われます。それはいろいろな可能性があるからです。
一番理想的なのは一社から複数の提案をあげてもらい、「このままでいくのか、思い切って直すのか」をオーナーが判断することです。
賃貸経営ではリフォーム以外にも出費があります。ADと呼ばれる広告宣伝費用であったり、フリーレントであったり。そこは全体のバランスと、オーナーの懐具合でかける予算を決めます。「リフォームしないと決まらない部屋」は、もしかしたら今の賃貸需給から漏れている物件かもしれません。そこにお金をかけるのはリスクが伴います。室内がキレイになれば、本当に空室が解消できるかは未知数です。実際直しても家賃が上がらないこともあります。
というのは「リフォームで儲けたい」という業者の思惑があるケースも多いのです。
あるアパートで何部屋かの空きが出て、2室を完全にフルリフォームをしました。第一印象を良くして、間取りも使いやすくしました。入居者は決まりましたが、費用対効果で見るとあまり良くありません。私たちはそのときに「オーナーの出費に対して、費用対効果が悪いな」と感じました。出した費用を家賃で元を取るには長い時間がかかります。
そこで、他の空室は、大規模なリフォームはせず、原状回復だけして賃料を下げて募集しました。リフォーム費用を回収するまでのことを考えれば、家賃は下がりましたが追加投資が少ない分、回収というゴールが遠くに行ってしまうことはありません。こうした、投資判断をオーナーが行っていかなければなりません。
物件を「どうしたいか」によって変わるお金の使い道
オーナーも、何が一番自分にとってベストなのか、さまざまな意見を聞いて決めないといけません。
オーナーの中には「この物件が気に入っていて、ずっと保有していきたい、大切にしていきたい」といった採算重視でない方もいらっしゃいますし、地主は、ある程度税金対策をする必要もあり、それほど収益を大きくしなくても、手堅く安定した利益を取っていきたいと考える方もいます。売却を検討している人の場合、少しお金を投入して、物件の見栄えを良くして、家賃を上げて、少しでも利回りを上げて高く売りたいと考えます。
このように物件にどれだけお金をかけるかという判断は、オーナーが「今後どうしたいか」にもよるところが大きいのです。
投資として考えると、リフォームのお金を他のことに使ったほうが効率いいかもしれません。例えば何百万円かけてリフォームするくらいなら、そのお金でローンの繰り上げ返済をしたほうがいい場合もあるでしょう。もしくは、次の購入物件の頭金に充てたほうがいい場合もあったりするのです。