(※写真はイメージです/PIXTA)

医療機関に電話するシーンを思い浮かべてください。身体のトラブルを抱えながら電話をしているのに、なかなかオペレーターにつながらなかったり、思うように診察の予約が取れなかったりして、イライラした経験がある人も多いでしょう。医師は患者が希望する場合、正当な理由がなければ、診療を行わなければならないという原則(応召義務)がありますが、時として病院の処理能力を超える電話というアナログな部分がネックになることも。本記事では、病院で活用される「AI予約電話」を通じて、DXが進む医療機関の今後を、医療法人徳洲会、湘南鎌倉総合病院・事務長である芦原教之氏が考察していきます。

AI予約電話の稼働による効果と今後の展望

その後、院外の方にAI予約電話をモニターとしてデモ機に触れていただき、年代別に合計177枚のアンケートを取得しました。

 

アンケート結果のポイントを挙げますと、「AI電話に対する抵抗感」については、AI予約電話の体験前後で「抵抗感なし」が71.8%から94.4%に改善するという明らかな態度変容が見られました。また、「繋がりやすいAI電話」と「繋がりにくい有人対応」のどちらを選ぶかという設問に対して、60代以上のモニターの82.8%がAI電話を選ぶと回答。

 

AI予約電話が正式に稼働したのは2024年に入ってからです。1月からプレ稼働を行い、2月から本稼働に入ったのですが、ほとんどクレームもなく、1ヵ月強で安定運用に入ることができました。

 

導入直後で印象に残っているのは、2024年2月5日の大雪の日のことで、当日は交通機関にも大きな影響が出ました。それに伴い来院の予約変更やキャンセルの電話が殺到し、通常の倍以上の件数が集中したのですが、導入したばかりのAI予約電話が問題なく捌ききってくれたのです。思いがけないかたちでAI予約電話の実力を知ることができました。

 

現在、AI予約電話の自動応答時間が平均3分、それからメディカルクラークが電子カルテを確認するなどの折り返し電話の準備に平均1分、患者さんとの通話から電子カルテ入力までに平均2分ですから、当院のスタッフが1件の電話対応にかける時間が平均10.5分から3分に劇的に改善したことになります。また、2022年6月時点で68%だった代表電話の応答率は、業務フローの変更の効果も相まって、2024年5月時点で安定的に9割以上を維持できるようになりました。

 

AI予約電話の開発費用やシステム使用料などがかかりましたが、電話業務にかかる人件費の圧縮分もありますので、すでに釣り合うラインまで持って行けるだけの見通しが立っている状況にあります。

 

(筆者提供)
[図表2]AI予約電話導入前と後 出所:筆者作成

 

導入後に行っているのは、主にAI学習とシナリオのチューニングです。

 

AI学習という点でいえば、医療用語の部分です。「産科」は病院内ではほとんど間違えない言葉ですが、「参加、傘下」として認識することもありました。また、「お産、周産、マタニティ」などが「産科」の類語であることも設定することで精度を高めています。

 

それから音声認識の特性で「はい」といった短い言葉を認識できないことがあります。そこでシナリオを調整して、利用者に「はい」ではなく「はい大丈夫です」と答えさせるように促しています。このような設定を加えることで誤謬率を下げて、有人対応に回る率を下げる努力をしています。

 

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