院内連絡を「PHS」から「スマホ」へ
筆者がマネジメントする大分赤十字病院は大分市の中心部に位置する340床の中規模病院です。急性期を主としていますが、地域包括ケア病棟も1病棟あり、28診療科を標榜しております。
当院において病院内スマートフォン150台を導入したきっかけは、これまでの院内の連絡手段であった旧規格のPHSが使用できなくなったことです※。
※外線通話の公衆PHSは2023年3月に停波となり、使用できなくなったが、自営型の院内PHSであれば、既存機器を活用して引き続き使用できる。
もう1つの背景としては、やはり「医師の働き方改革」です。現在、どの病院でもさまざまな取り組みが行われていると思いますが、単に「時間外労働を減らしてください」というだけでは、なかなかうまくいきません。もっと仕組みから変えていかなければならないのは明らかでしょう。
だからこそ、これからPHSからスマートフォンに切り替えることで、さらにタスクシフトを前に進め、働き方改革を推進していくうえで役立つのではないかと期待しながら導入に向けて検討してきました。
「いま、先生は手術中なのかな、外来中なのかな」絶えず気を遣う看護師
筆者は院長をつとめていますが、いまも医師として臨床の現場に立ち続けています。だからこそ日々感じている部分もあるのですが、「電話の連絡による中断」は仕事の効率を下げますし、精神的ストレスにつながります。
当然、緊急の用件であればかけてもらう必要があるのですが、実際の電話連絡のなかで緊急を要するものは少数なのです。
一方、看護師の立場で考えますと、「いま、先生(医師)は手術中なのかな、外来中なのかな」と絶えず気を遣いながら電話していますし、緊急性のないようなことを電話で連絡すること自体にも同じくストレスを感じています。
また、医師と看護師以外にも、病院のスタッフ間のコミュニケーションエラーによる生産性の低下、それに伴う医療安全上の問題も、当院に限らない一般的な経営課題として認識しております。これらの問題を病院内スマートフォンで改善ができるのではないかということです。
価格メリットが多い「医療機関向けモデルのスマホ」
スマートフォンを導入するときに、経営側として考えなければならないのはお金の問題です。導入費用だけでなく、固定費や維持費の負担などが懸案事項となりますが、結論から言うと、費用面は問題なくクリアできたということに尽きます。
当院におきましては、旧規格のPHSを廃止して、新たに別規格のPHSに変えるための費用と、医療機関向けに特化したスマートフォンを導入する費用の2つで比較したのですが、それほど差がありませんでした。また維持費用に関しましても、充分に許容できるものと確認できたため、2023年春にスマートフォン150台の新規導入に至りました。
当院が選んだのは、医療機関向けに特化したスマートフォンでした。
まず前提として医療機関に求められるセキュリティ対策がなされている必要がありますが、本製品であれば、たとえスマホを紛失したとしても管理者による遠隔ロックができますし、管理者が全ての端末を一括管理できるようになっているため、アプリのダウンロード制限も可能です。
また、4G・LTE回線で通信を行いますので、大手通信キャリアの電波が入る状況であれば、新たに病院内に専用アンテナを設置する必要がなく、導入費用を抑えることができます。この点にも大きなメリットを感じておりました。
そのほかにもさまざまな面において病院向けに最適化されています。たとえば、それぞれのスマホ端末にアプリを入れれば、診療上必要な薬剤情報や診療ガイドラインなどがすぐに確認ができますので、臨床の現場では非常に役に立ちます。
ここではとてもすべての機能をお伝えすることはできないので、導入してから半年余り経つなかで、特に仕事の効率性アップに役立ったと感じていることをご紹介していきます。
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