円安は「日本だけ金利が異常に低い」ことが原因
円安の最も大きな要因は、他国に比べて金利が低すぎることである。
コロナ禍の大規模な金融緩和・財政支出にロシアのウクライナ侵略が重なったことにより、世界中でインフレが進行した。そのインフレを抑えるため、各国の中央銀行は政策金利を引き上げたが、日銀だけは低金利のままだった。
つい最近、政策金利を0.25に引き上げたが、それでも国際的に見れば異常に低い水準である。セントラル短資FXが掲載している各国政策金利を見ると分かりやすい。
このなかで政策金利が1%にも届かないのは日本だけであり、日本の次に低いスイスですら1.25%である。
日本だけ異常に低い金利になっている理由は、自国のGDPとほぼ同じ規模の大量の国債を日銀が保有しているからである。金利を上げると莫大な評価損が生じ、実質的債務超過に陥る恐れがある。また、日銀当座預金の金利引き上げに伴う利払費の増加によっても債務超過になる危険がある。
他国と違って金利を大きく引き上げることができないため、為替介入を繰り返して無理やり円安を抑える必要がある。つい最近のわずかな利上げで円高方向に転換できたのでしばらくは延命できるかもしれないが、再度利上げ圧力がきた際にそれに応えることができなければまた円安が進む恐れがある。
人口予測が物語る“現実”……「一生働く」覚悟が必要
今後、円安がどこまで進行するかは不明である。したがって、「老後〇〇万円が必要」と議論することにあまり意味は無い。
円安を脇においても、そもそも人口予測からして、高齢世代を支え切れるようになっていない。
人口は既に減少に転じているが、年齢構成の割合を見ると、生産年齢人口(15歳以上64歳以下)と、14歳以下の割合は減少し続ける一方で、65歳以上人口の割合は増え続ける。生産年齢人口割合は2070年には52.1%になるが、65歳以上人口割合は38.7%である。
このように、長期的に見れば生産年齢人口で高齢人口を支え切れるはずが無いのである。これは政治が努力してどうにかなる問題ではなく、受け入れるしかない現実である。
なお、このように人口が推移するのは日本だけではない。OECD加盟国の中で合計特殊出生率が人口置換水準(2.07)を超えているのではイスラエルのみであり、他は全て下回っている。したがって、程度の差はあれ、先進国は日本と同じような運命を辿る。「一生働く」覚悟が必要である。
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