「一生働く」覚悟が必要…老後は2,000万円以上必要である確かな理由。多くの日本人が“受け入れるしかない現実”【弁護士がデータをもとに解説】

「一生働く」覚悟が必要…老後は2,000万円以上必要である確かな理由。多くの日本人が“受け入れるしかない現実”【弁護士がデータをもとに解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

少し前に話題となった「老後2,000万円問題」は、高齢夫婦無職世帯が30年間で約2,000万円の不足が生じるという試算に基づいています。しかし、この試算には考慮されていないポイントがいくつか含まれており、多くの人が老後に予期しない事態に直面する可能性が高い、とブラック企業被害対策弁護団に所属する弁護士・明石順平氏は言います。本稿では、明石氏が、こうした誤解が広まった背景と、実際に老後に必要となる資金について詳しく解説します。

「年金に関する老後不安」に付け込む詐欺師に注意

年金に関する将来不安に付け込んでくるのが詐欺師であるので、注意を促したい。警察庁の発表によると、令和5年1月から12月末までに都道府県警が認知したSNS型投資詐欺及びロマンス詐欺に係る被害発生状況は、SNS型投資詐欺が約277.9億円、ロマンス詐欺が約177.3億円、合計で約455.2億円となっている。

 

私の専門分野の一つがこのような消費者被害なので、詐欺被害の急増は身をもって実感している。

 

典型的なパターンは、インスタグラムのストーリーやフェイスブックの広告を通じて誘導され、ラインの友達登録をして「投資家」等と称する者とつながり、言われるがままお金を預けるが戻ってこない、というものである。AIを利用した「FX自動売買」「仮想通貨自動売買」を売りにした詐欺が頻出する。そして、詐欺師達は「老後の年金に期待できないので投資をする必要がある」などと言ってくる。

 

お金の支払い手段は指定銀行口座への振込によることが多い。この場合、当該口座への凍結申請をして、残高があれば仮差押・本訴提起をして回収できることがある(全額回収は稀だが)。詐欺師の方は凍結に備えて複数口座を準備し、振込がされた途端に引き下ろすため、凍結をしても残高が数百円しか無いこともある。なお、口座凍結申請は弁護士に依頼してやってもらう方法もあるが、警察に相談すると警察の方から銀行に凍結申請をしてくれることが多い。

 

今のところラインは登録電話番号の開示に極めて消極的であるため、ラインのやり取りの相手を特定するのは基本的に期待できない。そうなると、詐欺を行った者を被告として訴訟提起することもできなくなる。したがって、ある程度被害額を回収できるのは、凍結口座に残高があった場合に限られるのが一般的である。

 

この場合、凍結口座の名義人を相手として仮差押や本訴提起をすることになる。名義人は個人の他、会社名義(合同会社が多い)のこともある。

 

凍結口座の残高は、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」というページで確認できる。

 

既に警察に相談して口座凍結済みの場合、このページを自分でチェックし、目的の口座の残高がある程度存在することを確認できたら弁護士に依頼するのが費用対効果から見て合理的である。なお、凍結から公告まで2~5ヵ月程度かかる。また、仮差押等の手続は公告から2ヵ月以内にする必要がある。

 

いつ公告されるか分からない上に、公告されてからの期間制限があるので、毎日チェックする必要がある。

弁護士による2次被害も

注意しなければならないのが、弁護士による2次被害である。投資詐欺被害は一般的に言って回収可能性が高いとは言えない。そういったリスクをきちんと説明せず、「回収できる」ことを強調して受任する弁護士がいる。

 

一般人を相手にした弁護士の報酬体系は基本的に着手金と成功報酬からなっており、全く回収できないようなケースでも、着手金だけは得ることができる。したがって、着手金欲しさにリスクを説明せず、受任する弁護士が出てくるのである。

 

このような弁護士の見分け方としては、法律相談を弁護士自身が対応しないとか、着手金が高いのに成功報酬が異常に低い(回収額の1~2%等)という点が挙げられる。また、ネットで大々的に広告展開していることも多い。詐欺に引っかかるのも要注意だが、その後に弁護士の2次被害にひっかかるのにも注意していただきたい。

 

最後に強調しておくが、「ネット上の儲け話は全部詐欺」である。例外など無い。「これは本当ではないか」と思ってしまう人が引っかかる。また、副業を検索して詐欺に引っかかる人も激増している。ネットで儲け話や副業を探すのはやめた方が良い。詐欺師はあなたの想像以上にネット上にたくさん存在する。

 

 

弁護士

ブラック企業被害対策弁護団所属

明石順平

 

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