(※写真はイメージです/PIXTA)

故人の銀行口座にある預貯金は、たとえ相続人であっても自由に引き出すことができません。金融機関に口座名義人の死を知らせると口座が凍結することは周知の事実でしょう。本記事では、被相続人の預貯金を相続人でわける方法について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺産分割協議成立前に預貯金を引き出すことはできる?

遺産分割協議の成立前に、被相続人の預貯金を引き出すことはできるのでしょうか? 整理して解説します。

 

金融機関に死亡連絡をしないと口座は動いたまま

誤解も少なくありませんが、2024年(令和6年)2月現在、人が亡くなった時点で銀行口座が自動的に凍結される運用はされていません。そのため、被相続人の口座は、その者が亡くなったことを遺族などが金融機関に連絡をしない限り、動いたままとなっていることが原則です。

 

一方で、遺族などが金融機関に死亡の連絡を入れるなどして金融機関が口座名義人の死亡を知った時点で口座は凍結され、入出金ができなくなります。

 

キャッシュカードを使っての引き出しは禁止されている

金融機関に連絡を入れるまでの間は口座が動いたままであるということは、キャッシュカードが手元にあり暗証番号もわかるのであれば、これを使った引き出しは事実上可能であるということです。しかし、キャッシュカードは金融機関の約款により、本人以外の使用を禁じられていることが原則です。

 

また、相続人の一部が故人のキャッシュカードを使って無断で預金を引き出したとなれば使い込みなどを疑われ、ほかの相続人とのあいだで大きなトラブルに発展するおそれがあります。

 

そのため、たとえ暗証番号を知っていたとしても、故人のキャッシュカードを使った預金の引き出しは避けたほうがよいでしょう。

 

親のお金で生活をしていたのに、親が亡くなってしまったら…

相続が発生してから遺産分割協議が成立するまでのあいだ、被相続人の預貯金を一切引き出すことができないとなると、被相続人の収入で生活をしていた家族が困ってしまったり、葬儀代の支払いに苦慮してしまったりする事態となりかねません。

 

そこで、遺産分割協議が成立する前であっても金融機関で所定の手続きをとることで、次のいずれか低い金額までであれば、各相続人がほかの相続人の同意を得ることなく預金の仮払いを受けることが可能とされています。

 

1.相続開始時点におけるその金融機関の預貯金残高×その相続人の法定相続分×3分の1
2.150万円

 

遺産分割協議の成立前に被相続人の預貯金を引き出す必要がある場合は、キャッシュカードを不正に使用して引き出すのではなく、預貯金の仮払い制度を使った正式な方法で引き出すようにしましょう。

 

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