(※写真はイメージです/PIXTA)

故人の銀行口座にある預貯金は、たとえ相続人であっても自由に引き出すことができません。金融機関に口座名義人の死を知らせると口座が凍結することは周知の事実でしょう。本記事では、被相続人の預貯金を相続人でわける方法について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

預貯金の遺産分割

はじめに、預貯金と遺産分割の基本を解説します。

 

「預貯金も遺産分割の対象」の意味

大前提として、故人(「被相続人」といいます)の預貯金は、遺産分割の対象となります。これだけを目にすると、「そんなことは当たり前ではないか」と感じるかもしれません。

 

しかし、民法では「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」と規定されており、可分債権は遺産分割をするまでもなく自動的に相続分で分割されることと解されています。

 

可分債権とは、その性質上分割が可能な債権を指します。代表例は貸付金です。たとえば、被相続人の相続人が配偶者と長男、二男の3名であった場合、被相続人がA氏に400万円を貸していた場合、遺産分割をするまでもなくA氏に対する貸付金のうち200万円は配偶者が、100万円は長男が、残りの100万円は二男がそれぞれ承継することが原則となります。

 

同様に、預貯金も可分債権であると考えられることから、以前は預貯金も遺産分割の対象外であり、相続分によって自動的に承継されるものと解されてきました。

 

そのため、被相続人がB銀行に400万円を預金しており、配偶者と長男、二男が相続人である場合、遺産分割協議を経るまでもなく配偶者は200万円、長男と二男はそれぞれ100万円を単独で引き出せるという建て付けになっていました。

 

とはいえ、たとえ可分債権であっても、相続人全員が合意することで遺産分割の対象とすることは可能です。

 

実際に遺産分割の対象とされることが多かったことから、金融機関に一部の相続人が単独で払い戻しを求めたとしても、実務上は払い戻しに応じてもらえないことがほとんどでした。

 

また、預貯金が遺産分割の対象にならないとなると、預貯金が遺産分割の調整弁としての役割を果たせず不都合が生じます。このように、法律の建て付けと実務がズレていた状況がありました。

 

そのようななか、最高裁判所が2016年(平成28年)12月19日に「預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」とする判決を下し、従来の判例が大きく変更されました(最高裁判所平成28年12月19日大法廷決定)。

 

これにより、判例においても預貯金が遺産分割の対象となることが明示され、実務と判例の考え方が一致するに至っています。

 

預貯金を引き出せるのは、原則として遺産分割協議の成立後

先ほど解説したように、2024年(令和6年)現在では、預貯金が遺産分割の対象となることについて明確となっています。そのため、被相続人の死亡後に預貯金を引き出すためには、原則として遺産分割協議(遺産分けの話し合い)を成立させなければなりません。

 

たとえ法定相続分に相当する部分だけであったとしても、遺産分割協議を経ることなく引き出すことは原則としてできないことには注意してください。

 

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