銀行員「お父さんに隠し子が」…“不毛な議論”に子を巻き込まないために、余命宣告後の森永卓郎氏が真っ先に着手した「生前整理の最優先事項」

銀行員「お父さんに隠し子が」…“不毛な議論”に子を巻き込まないために、余命宣告後の森永卓郎氏が真っ先に着手した「生前整理の最優先事項」
(※写真はイメージです/PIXTA)

昨年末に膵臓がんであることを公表した、経済アナリストの森永卓郎氏。病院から退院した森永氏がとりかかったのは「生前整理」でした。森永氏の著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、自身の父親の財産相続時の苦労と、その経験から辿り着いた、子への相続手続きの際の負担軽減の対策について、みていきましょう。

今のうちに対策するも…

結局、父の戸籍謄本をすべてそろえるだけで3ヵ月はかかったと思う。
そして、銀行で口座の存在が確定すると、今度は預金通帳の再発行や、印鑑を改めるための改印申請をしなければならない。結局、すべての作業が終わるまで、半年くらいの時間がかかった。

 

父が亡くなる直前に東日本大震災が発生し、私の仕事が軒並みキャンセルになった時期だったので預金の整理ができたが、もしそうした特殊事情がなければ、相続税の申告に間に合わなかったと思う。

 

そのときのにがい経験があったので、父が亡くなった直後、私は自分自身の預金口座、証券口座の一覧表を作成して、パソコンのハードディスクに保存していた。

 

余談だが、数年前にそのパソコンが“突然死”してデータを取り出せなくなった。幸い妻のパソコンにバックアップがあったので、事なきを得たが、ハードディスクだけでの保存は危険だ。

 

そのときに作成した私の金融機関のリストを退院後すぐに長男と次男にメモリーカードに入れて渡したのだが、何しろ13年も前に作ったリストだ。さらに、いくら相続人といえども、他人が預金を引き出すのには、相当手間がかかることは父の預金引き出しでわかっていた。

 

いざ、口座を一本化

そこで、私は預金口座の一本化を進めることにした。私の預金は10の金融機関に分散していた。銀行の経営不安が高まったときに、預金保険の対象になるように細かく分けたことも、数が多い原因だった。

 

それを一本化しようとして、通帳を探したのだが、なんと半分近くの預金通帳が見つからなかった。そして、銀行印も見つからないか、どの印鑑を使っていたのかわからなくなっていた。

 

歴史は繰り返すではないが、父のときと同様に通帳の再発行や改印申請を今度は私自身の口座でやる羽目になった。ただ、13年前とくらべて明らかに違っていたのは、銀行窓口の待ち時間だった。いまはリストラで銀行支店の人員が大きく削減されている。だから、預金の解約だけで、通帳がないと2~3時間待たされる。

 

ある銀行では、改印をするだけで3週間くらいの時間がかかった。結局、空き時間に優先して銀行回りをしたのだが、一本化の作業が終わるまで3ヵ月の時間を要した。これで相続の際に子どもたちの作業は大幅に減るはずだ。
 

 

森永卓郎

経済アナリスト

獨協大学経済学部 教授

 

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※本連載は、森永卓郎氏による著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より一部を抜粋・再編集したものです。

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