マネジメントの醍醐味は相手に言葉がきちんと届くこと
人や組織のマネジメントをするうえで大事なことはたくさんありますが、私が最も重要だと感じるのは、「言葉で伝えていくこと」です。これは、重要であると同時に最も難しいことだとも感じます。そして、難しいがゆえに、できると喜びを感じます。
よく「背中を見て育つ」と言われますが、確かに私もそう思います。しかし、実践ではそうはいかないというのが私の本音です。私の後ろ姿が悪いのかもしれませんが、そもそも背中を見てわかるほどの人間は極々一部で相当優秀な人ではないでしょうか。
私はリーダーには「陰で努力するな! 誰でもわかる表で努力しろ」「陰で努力するのは自分の逃げ口実」「これくらい言わないでもわかってよ、はリーダーの甘えでしかない」と言っています。人が陰で努力していることがわかる人はそもそもあまりいないと思うからです。
今は経営者となって日々社員たちに伝えていくことを実践していますが、「自分の内面にあるものを言葉にして表に出す」というのが一番難しいですし、どうすればいいのか迷います。
言葉選びを間違うと、こちらが思っていることが正しく相手に理解されず、全く違う文脈になってしまったり、表現力が乏しいと、相手の心に届きません。不用意なひと言で相手の気持ちを傷つけたり、逆なでしたりすることもあります。
朝礼や面談、一緒に食事をするときなど、様々な場面で私は自分の思いや考えを社員に伝えていますが、今でもなかなか満足のいく話し方ができません。「今日もちょっと違ったな」と反省することばかりです。
しかし、難しい分、的確な言葉や表現で話すことができて、「相手に伝わった」と手応えを感じたときは、大きな達成感がやってきます。マネジメントの醍醐味は、いかに部下たちに自分の言葉をまっすぐ届け、相手の中に注入していけるかではないでしょうか。
「言わなくてもわかってよ」は怠惰な甘え
人の上に立つリーダーは、わかりやすい言葉や伝わりやすい表現を模索し、自分の中にある考えやビジョン、思いなどを下の者たちに明示していかなくてはなりません。
態度でわかってくれ、こちらの思いを推し量ってくれというのは、怠惰であり甘えであると私は思っています。家族や恋人同士の間でならいざ知らず、ビジネスの場において「言わなくてもわかってよ」はあり得ません。
部下に期待していることがあるのなら、面談などの機会を設けて本人に直接「君にはこういうことを期待しているんだよ」「将来的には、このポジションを用意している」とはっきり口に出して伝えるべきです。
話す時間を割くのは、相手を知りたいという欲求と、自分が伝えたいことと相手が望んでいることのギャップを知りたいからです。
このギャップは、お互いの立場柄、埋まることはあり得ませんが、少なくしていく努力はしなくてはなりません。大変なことですが、その行動を起こすのは常に上席側からであるべきです。
会社は、私を含めそれぞれの立場で、それぞれの事情を背負った人たちの集まりです。全員違う人間ですから、わかり合えるはずなどありません。だからこそわかろうと努力し、対話や確認をし続けなければならないと思うのです。
これはお客様に対しても同じです。営業マンも表現力を磨き、お客様に伝わりやすい話し方を常に意識する必要があります。