マニュアル対応に慣れた消費者は「プラスα」を求める
前回の続きです。
中小企業ならではの強みとして「小回りの利きやすさ」と「地域密着」に加え、最後にもう一つ、「アナログに立ち返った、きめ細やかな接客・対応」を挙げたいと思います。
大手の企業はどこも、マニュアル化により画一的なサービスを提供することを重要視しています。
たとえば、ファミリーレストランのフロア係の接客は、完全にマニュアル化されています。お客様が店に入ってきたときに掛ける挨拶の言葉から、注文を受けるときの受け答え、料理の提供の仕方、会計時のお金の受け渡し方まで、細かくマニュアル化されています。そのため、どこの店でも似たようなサービス、雰囲気です。
フロア係のほうから積極的に客に関わってくることはないため、「食事ができればよく、サービスは求めない」「干渉されたくない」という人にとっては、とても相性がいいでしょう。
しかし、今の消費者はマニュアル対応に慣れ切っていますから、画一的な接客をするとすぐ見抜かれてしまい、「もうちょっと融通を利かせてくれてもいいのにな」と物足りなく思われてしまうことがあります。
誤解を恐れずに言えば、今はマニュアルだけでは通用しない時代になっているだけでなく、マニュアルの本来の意味合いと消費者心理とが、かけ離れた存在になっているのではないでしょうか。マニュアルでできるような最低限のサービスは当たり前、もはや時代遅れになりつつあり、消費者はその上のプラスαを求めているのです。
そういう意味では、町のレストランなどは比較的、お客様の細かな要望に応えてくれる店が多いように感じます。店によっては、こちらが言う前に「食べられない食材や苦手な食材はありませんか」と、気を回して聞いてくれたりもします。その一言で、「ああ、この店は私においしく食事をして、満足して帰ってほしいと思ってくれているんだな」と嬉しくもなります。しかも気を張った高級レストランではなく、下町の洋食屋さんのような手頃な価格の店でそういう対応をしてもらい、値段以上に得をした気分になったことがあるという人も多いのではないでしょうか。
これは大手チェーンが悪で、小規模店舗が善だという単純な話ではなく、顧客はその場面、場面で自分に相応しいほうを臨機応変に選べばいいだけの話なのです。ただ、サービスを提供する側とすれば、消費者の「マニュアル対応への慣れ・飽き」は見過ごせない問題です。おそらく今後はますます、画一的なサービスだけでは消費者を満足させられない時代が進むことでしょう。
大手と勝負するには、アナログ的な部分に磨きをかける
今はAmazonなどで買い物をすると、次回から「お勧め商品」が表示されるようになっています。AIが購入者の属性や興味・関心などをキャッチして、その人に合わせた商品をピックアップしてくれる仕組みです。
今後はこうしたAIがますます脚光を浴び、あらゆる分野で常態化されていくと言われています。そんな時代だからこそ顔が見えるアナログ的な部分に磨きをかけ、お客様の心を見ながらの接客で、AIでは及ばないサービスを提供できれば、と思っています。
小さな会社は大手のしていることを目指すのではなく、大手の不得意な部分で徹底的に戦って勝つ。そのためには、スピードと泥臭いアナログ的な部分に磨きをかけ「本当のサービスとは何か」「顧客が求めているサービスとは何か」を見直す必要があるのではないでしょうか。