労働市場の減速で「景気後退」に陥るリスクを懸念
7月FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議⻑は「肝心なのは、労働市場がより急激に悪化することを心配しているのかということだ。急減の兆しは注視している」と発言しました。インフレ抑制に注力してきたFRBが、労働市場の軟化にも配慮した姿勢にシフトした背景には、パウエルFRB議⻑が労働市場が減速しすぎて、景気後退に陥るリスクを懸念しているためと考えられます。
サーム・ルールでは、失業率の過去12ヵ月の最低値に対して、直近3ヵ月平均が0.5%上昇したときに、景気後退が始まるとされます。7月は失業率が4.3%へ上昇したことで、サーム・ルールに基づく数値は0.53%と、6月(0.43%)から上昇し、景気後退を示唆する水準に達しました(図表3)。
同ルールを提唱した元FRBエコノミストのクラウディア・サーム氏は、7月の雇用統計で失業率が予想外に上昇したことについて、「失業率のこうした上昇は、過去においては景気後退の初期と整合的だった」としたうえで、景気後退に「不快なほど近づきつつある」と述べました。
7月の失業率がサーム・ルールに抵触したことで、金融市場では、米国の景気後退入りを懸念する向きが強まっています(図表4)。