不動産業界の大敵である「地面師」をご存じでしょうか? 大手住宅メーカーが数十億円を騙し取られた事件で、その名が全国的に広まりました。詐欺師である地面師は、個人の不動産投資家の敵でもあります。投資業界には儲け話をエサに詐欺を働こうとする悪質な業者もいますが、彼らに怯えていては投資で成功することなどできません。悪質な手口を上手にかわし、健全な不動産投資を行ううえで知っておくべきことについて、不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が解説します。
地面師だけじゃない…不動産投資家が注意すべき「手付金詐欺」とは?
さて、地面師と呼んでいいものかわかりませんが、現実に多発している詐欺の話もご紹介します。筆者が気を付けるべきなのは、「手付金詐欺」だと思います。
不動産取引では、売買契約から代金の決済まで1ヵ月程度期間をあけることも多く、そのため、買主側は売主に「手付金」を先払いすることが多いです。この手付金「詐欺」は非常に多いのではないかと思います。専門家として「詐欺」と呼んでよいのか悩ましい部分もあるのですが、手付金詐欺が「詐欺」と立証できるかはさておき、手付金を支払ったものの、
- 連絡が取れなくなる
- 解約したいが、手付金を消費してしまい返還できない
など、ちゃんと売るつもりもないのに、手付金だけを取得する目的で契約を結ぶようなトラブルは度々お話を聞きます。また、もっとシンプルに「おいしい話があるから、契約書はないが、先に手付金を払ってくれ」と手付金を払わせて持ち逃げするなど、単純手口の詐欺もあります。
先述した地面師と同じで、スピード勝負の不動産取引の世界において、「儲け話」につられて騙されやすくなっているということには注意して臨む必要があるといえます。
金策に困った不動産会社や建築会社により、度々引き起こされるトラブルですので、くれぐれも巻き込まれないよう注意しましょう。
たとえ犯人が捕まってもお金は戻ってこない可能性が高い
地面師でも手付金詐欺でも、「騙されたら、払ったお金は戻ってこない」と心して慎重に取引に臨む必要があります。詐欺事件だとして警察が犯人を捕まえてくれても、お金が戻ってくるかはまた別の問題になります。警察がお金を取り戻してくれるわけではないのです。
そして、犯人が見つかって、裁判手続などを利用しても、犯人のもとにお金がなければ、それ以上取り立てることができない可能性があるというのも現実的にあり得る結論なのです。
したがって、世の中にたくさんの詐欺が蔓延していますが、あくまで騙されたら最後と詐欺被害にあう前の予防が非常に大事なのです。
では、どのように対策するかですが、
- 偽造等含めて違和感があれば、確認する
- 隣地の人の聞き込み等も行って地面師等を警戒する
- 甘い言葉に惑わされず、書類等をきちんと確認する
など、一般論を述べることは可能ですが、なかなか巧妙な詐欺に気づくのが難しいことがあるのも事実です。一番のポイントとしては、「詐欺」もあり得ると疑って、慎重に取引を進めるという心構えが重要だと思います。
監修
山村 暢彦
山村法律事務所
代表弁護士
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弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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神奈川県弁護士会 所属
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