漢詩に触れると「言いたいこと」を圧縮するセンスが身につく
古典と聞くと「読むのが難しいのではないか」「とっつきづらいのではないか」と思うかもしれませんが、有名な作品の場合、現代語に翻訳されて読みやすくなっていることも多いです。まずは、現代語訳から手に取ってみるのもいいでしょう。
ただし、あえて原典のもとの形のまま接してみてほしい書物もあります。それが漢詩です。漢詩とは中国の伝統的な詩のことで、形式として古詩、律詩、絶句などがあります。
漢詩の中のひとかたまりを「句」と呼びますが、句の数が8つの八句が律詩、4つの四句が絶句、それ以外は古詩と分類されます。また、句には5文字の五言、7文字の七言があります。これらを組み合わせて、五言絶句、七言絶句、五言律詩、七言律詩などと呼びます。学校の漢文の授業で習うことなので、何となく覚えているという人もいることでしょう。
原典のままの漢詩に触れてほしいのは、漢詩の「言いたいことを圧縮する力」を感じてほしいからです。
唐の詩人の杜甫を例に説明しましょう。後に詩聖とまで呼ばれることになる杜甫は「君不見簡蘇徯」という漢詩を残しています。「簡」とは手紙を送るという意味で、「蘇徯」は杜甫の友人の子どもの名前です。世間で認められないことに落胆して山に隠れてしまった蘇徯を励ますために杜甫が送ったのが「君不見簡蘇徯」で、こういう内容になっています。
「百年死樹中琴瑟/一斛旧水蔵蛟竜/大夫蓋棺事始定/君今幸未成老翁/何恨憔悴在山中」
書き下すと、「百年の死樹琴瑟に中る/一斛の旧水蛟竜を蔵す/大夫棺を蓋いて事始めて定まる/君、今幸に未だ老翁と成らず/何ぞ恨まん憔悴して山中に在るを」です。
これを日本語に訳すと、「100年前に切り倒された木も琴の材料にされるかもしれない。見捨てられた池の水にも、もしかしたら龍が住んでいるかもしれない。同じように、人の価値は、死んでからでなくてはわからない。君はまだ若い。山の中に隠れて、ふさぎ込んでいるものじゃないよ」となります。
杜甫の友の子を思う、これだけの気持ちがわずか35字の詩で表現されているのです。こうした漢詩に触れることで、行間を読む力が身につき、言いたいことを簡潔に凝縮する技術のヒントもつかめるのではないでしょうか。
自分の言いたいことを言葉にしようとすると、どうしてもダラダラと長くなってしまうと悩んでいる人は漢詩に触れることをおすすめします。
【ポイント】
●古典には現代語訳もあるが、漢詩は原典に触れてほしい。
●漢詩には言いたいことを短くまとめる技術が詰まっている。
●漢詩を読むことで文章を圧縮するセンスを知ることができる。
●行間を読む力も漢詩によって身につけられる。
【監修】山口 謡司
大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問
1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。
注目のセミナー情報
【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術
【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術
【国内不動産】11月21日(木)開催
金利上昇局面に対応!銀行からフルローンを引き出す
「最新不動産投資戦略」
利回り7%超!「新築アパート投資」セミナー
~キャッシュフローを最大化させるためのポイントも徹底解説
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】