相続人は血縁関係によって決まります。とはいえ親子関係は単純なものばかりではなく、「隠し子」や「認知していない子ども」、「連れ子」がいるなど、複雑な事情を抱える家庭も少なくありません。では相続が発生した際、複雑な事情を持つ子どもの「相続する権利」はどのような扱いになるのでしょうか。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、3つのケースを取り上げ解説します。
Q. じつは前妻との間に子どもがいるのですが、このまま黙っていてもよいでしょうか?
A. 黙っていても、相続時に子どもの存在はわかってしまいます。
離婚していようと、別居していようと、自分の子どもは相続人のままです。そして、故人の相続人を特定する場合には、亡くなった方が生まれてからお亡くなりになるまでのすべての戸籍を集めることによって行います。
前妻(前夫)との間に子どもがいる場合、戸籍に記載されているため、相続人調査の段階で子どもの存在がわかってしまいます。生前に遺言書を作成しておけば、現在の妻と前妻との子との間で話し合い(遺産分割協議)をする必要はありませんが、遺言執行者は相続人に通知をしなければならないため、遺産分割協議の有無とは別に相続人調査を行う必要があります。
そして子どもであれば遺留分をもつため、前妻との子が遺留分侵害請求をしてきた場合には、基本的に対応せざるを得ないでしょう。
認知していない子どもはどうなる?
では、戸籍に載っていない、つまり認知していない子どもの場合はどうでしょうか。婚姻関係のない相手との間に子どもができた場合、母子関係は出産によって証明されますが、父子関係は父親が「自分の子どもである」と認知しなければ父子となりません。
そのため、実際には血縁関係にあっても、認知をしてない子どもは相続人にはなりません。子どもの認知は、死後に遺言によって行うことができます。
また、父親が認知を拒む場合は、子どもの立場から家庭裁判所に対して認知を求める調停を申し立てることができます。この申し立ては父親が亡くなっても、死後3年以内であれば可能です。
連れ子はどうなる?
結婚した相手に連れ子がいた場合、連れ子と自分の間に法的な親子関係はないため、相続人にはなりません(遺言書によって遺贈を行うことは可能です)。ただし、養子縁組をした場合には、実子と同様に相続人になり、遺留分を有します。
松尾拓也
行政書士/ファイナンシャルプランナー
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行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。1973年北海道生まれ。
父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。
家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級、墓地管理士など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。
経営する石材店では、おひとりさまやおふたりさまに好評な樹木葬や永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓など多様なニーズに応える墓苑を運営している。また、インテリアに合うモダンな仏壇の専門店も開設し、現代のライフスタイルに寄り添うご供養を提案している。
さらに地域ぐるみで終活に取り組む必要性にも着目し、他士業の専門家と連携した終活サポートチームを結成。終活セミナーなどの啓蒙活動に取り組むとともに、地域の行政に働きかけて独居高齢者の終活情報登録制度をスタートさせるなど、多方面で活動の場を広げている。
一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。趣味は本と酒と旅、ちょっと古めのクルマとバイク、座右の銘は「遊ぶように仕事し、仕事するように遊ぶ」。普段から「サムシングエルス(何か別の価値)を提供する」ことを大切にしている。
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