法律上婚姻関係にある場合は同居・別居に関わらず配偶者も「相続人」の1人に数えられます。しかし、DVの被害によって別居している場合、配偶者に遺産が相続されることを容認できない人も多いでしょう。いったいどのようにすれば遺産の相続を防ぐことができるのでしょうか。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋し、DVの加害者である配偶者に遺産を相続させないための対処法について解説します。
Q. 別居しているDV夫に遺産を渡したくないのですが……。
A. 配偶者である限り、基本的には相続人となりますが、方法がないこともありません。
法律上の婚姻関係にある以上、別居していても配偶者は相続人となります。
たとえ遺言書によって「別の人に全財産を渡す」としても、配偶者である以上、遺留分の請求もできるので、法定相続分の2分の1は受け取ることができます。
しかし、「相続廃除」 という制度を使えば、相続する権利を剝奪することができます。
相続廃除の方法
①被相続人に対して虐待や、重大な侮辱を加えていた、その他著しい非行があったという事実を明らかにする
②被相続人の戸籍のある市町村役所に「廃除届」を提出する
①については、家庭裁判所に申し立てて、認めてもらう必要があります。
相続廃除は財産を相続する権利を失わせる手続きであるため、非常に厳正な審査が行われます。そのため、相続廃除が認められる確率は決して高くはないのですが、DVの事実が証明できるのであれば、可能性はあるといえます。
認められれば、②の「廃除届」を提出します。
②については、生前に家庭裁判所に廃除の申立てを行う 「生前廃除」、遺言で廃除の意思を示し、死後に遺言執行者が廃除の申立てを行う 「遺言廃除」 の2つの方法があります。
確実に相続廃除をしたいなら、生前廃除のほうがよいでしょう。
夫婦の場合、離婚をすれば簡単だが……
血縁でつながっている親子関係とは違い、夫婦関係は婚姻が解消されればその時点で相続の権利も消滅します。
配偶者に財産を渡したくないと思うなら、離婚によって相続人でなくしてしまうほうが、手っ取り早いといえます。
「離婚」と「相続廃除」、どちらがいいのか、検討しましょう。
松尾拓也
行政書士/ファイナンシャルプランナー
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行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。1973年北海道生まれ。
父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。
家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級、墓地管理士など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。
経営する石材店では、おひとりさまやおふたりさまに好評な樹木葬や永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓など多様なニーズに応える墓苑を運営している。また、インテリアに合うモダンな仏壇の専門店も開設し、現代のライフスタイルに寄り添うご供養を提案している。
さらに地域ぐるみで終活に取り組む必要性にも着目し、他士業の専門家と連携した終活サポートチームを結成。終活セミナーなどの啓蒙活動に取り組むとともに、地域の行政に働きかけて独居高齢者の終活情報登録制度をスタートさせるなど、多方面で活動の場を広げている。
一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。趣味は本と酒と旅、ちょっと古めのクルマとバイク、座右の銘は「遊ぶように仕事し、仕事するように遊ぶ」。普段から「サムシングエルス(何か別の価値)を提供する」ことを大切にしている。
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