アパート経営者が自らゴミを処分してはならない
まず注意しなければならないのは、アパート経営者が、自らゴミを処分してはならないということです。当該部屋は入居者に対して賃貸借されているので、原則として、アパート経営者は部屋に立ち入ることができないうえに、ゴミに見える物も入居者の所有物だからです。
そのため、入居者自身に対処してもらうか、賃貸借契約を解除したうえで残置物として処理する必要があります。
ところが、汚部屋・ゴミ屋敷の入居者自身には、ゴミを処分する意思や能力がないことが通常です。そこで、アパート経営者としては、緊急連絡先となっている親族や保証人に連絡を取って対処してもらうことが、現実的な対処法となります。行政機関に相談して注意してもらうことも手段となるかもしれません。
建物賃貸借契約は、賃貸人と賃借人とのあいだの信頼関係に基づいているため、解除するためには、「信頼関係が破壊された」といえる状況が必要です。
汚部屋・ゴミ屋敷となっているからといって、それだけで契約を解除するのではなく、東京地方裁判所平成10年6月26日判決の事案のように、繰り返し注意しても改善されないから解除するというプロセスが必要となります。
汚部屋・ゴミ屋敷は、放置すればするほどゴミが積み上がり、害虫の発生、建物の崩落、火災の発生といった重大な事態に発展する可能性があります。そこで、早期に汚部屋・ゴミ屋敷を発見して、改善すべく注意を行ったり親族等に連絡を取ったり対処することが必要です。
そのためにも、火災報知機検査を拒否し続ける部屋があれば個別に注意するなどして、各部屋の状況の把握に努めることも、アパート経営者がなすべき対処法といえます。
発見次第、入居者の親族・保証人、行政機関へ相談を
アパート経営者にとって、部屋を汚部屋・ゴミ屋敷状態にされてしまうことは、美観を害すことや悪臭の発生だけでなく、建物の崩落や火災に発展する可能性がある大問題です。かといって、アパート経営者が自らゴミを処分することはできません。
また、部屋をこうした状態にしてしまう入居者自身は、対処する意思や能力に欠けていることが通常です。
そこで、入居者の親族や保証人、場合によっては行政機関に相談することが求められます。賃貸借契約を解除する場合にも、注意を繰り返しても改善されず、信頼関係が破壊されたといえることが必要となります。
汚部屋・ゴミ屋敷は、放置してしまうと、ゴミが積み上がり、状況が悪化していくばかりです。そのため、早期に発見して、改善に向けた指導を行ったり必要な連絡を取ったり、裁判を起こしたりすることが求められます。そのため、アパート経営者にはアパート入居者およびその部屋の状況を定期的に把握しておくことが求められます。
監修
柿沼 彰氏
柿沼彰法律事務所
弁護士