(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営による家賃収入と給与収入を受け取っているサラリーマン大家。給与収入がなくなる定年後に向けて、収入の変化によって税金周りの対応にも変化が生じます。定年後に損しないためにも、事前に検討すべきことを田中康雄税理士が解説します。

定年退職前と後の税金の変化

サラリーマンが中古アパートなどを購入し副業として家賃収入を得る、いわゆるサラリーマン大家。サラリーマン時代はアパートローンなどの返済もあって不動産所得として手元に残るキャッシュはそれほど多くはないかもしれません。しかし、返済が完了すれば老後は安定した家賃収入が見込まれます。

 

こうした期待を抱きながら定年退職を迎え、その後収入のメインが給与から年金へと移っていくと、所得税や住民税などの税負担は減りますが、同時に年収そのものも減少していきます。

 

そのようななか、サラリーマン大家が所有するアパートが中古物件のものであれば、定年退職のタイミングでアパートに関わる課税関係にも変化が現れ始めます。老後の生活のためにも、なるべく早い段階で税金対策をしておきたいものです。

サラリーマン時代と同じでは損する可能性も…定年前に必ず検討すべき3項目

①減価償却はいつまで続くのか

アパート投資の対象として中古物件を選ぶメリットのひとつは、建物に対し中古資産の耐用年数を設定することで、通常の耐用年数よりも短い期間で償却できることにあります。減価償却がとれている期間は節税効果がありますが、耐用年数に達すると減価償却費の計上はできなくなってしまいます。

 

また、メイン収入の多寡により、減価償却のメリットも変わってきます。

 

そのため、不動産所得として必要経費に算入できる減価償却費が定年退職後どのくらい続き、いつ終わってしまうのかという点について、確認しておく必要があるでしょう。

 

②大規模修繕のタイミングをいつにするか

サラリーマン大家が購入した中古物件は、定年退職を迎えるころになると雨漏り対策や外壁塗装などの大規模修繕が必要になってくるケースも少なくありません。

 

こうした費用は必要経費に算入されますが、比較的金額が大きくなるため、その年の不動産所得が赤字になってしまうことも。このような不動産所得の損失は、ほかの所得と損益通算することができます。

 

しかし、サラリーマン時代であれば給与所得と損益通算できていたものが、その対象が年金ともなればその年に損益通算しきれないということも十分に考えられます。

 

そして、その年にほかの所得と相殺しきれなかった損失は、事前に対策をしておかなければ切り捨てられることにもなりかねません。そういう意味では、サラリーマン時代に思い切って大規模修繕を行っておくのも節税対策のひとつといえるのかもしれません。

 

③ローンの返済を完了させるか

アパートローンの利息は、不動産所得の必要経費になります。しかし、大規模修繕などによって不動産所得が赤字になると、本来は必要経費に算入することができる借入金利子ののうち、土地の取得のために要した利息として、一定の方法によって抜き出された部分は損益通算の対象から除外することとされています。

 

サラリーマン大家の場合、定年退職のタイミングでローンの返済が完了するように設定しているケースが多いかもしれませんが、もしそうでなければ損益通算できる金額を少しでも無駄にしないためにも、ローンの完済時期を視野に入れながら大規模修繕のタイミングを検討することも必要かもしれません。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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