(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営による家賃収入と給与収入を受け取っているサラリーマン大家。給与収入がなくなる定年後に向けて、収入の変化によって税金周りの対応にも変化が生じます。定年後に損しないためにも、事前に検討すべきことを田中康雄税理士が解説します。

サラリーマン時代に打つべき事前対策

①青色申告の承認申請をしておく

サラリーマン時代の家賃収入はあくまでも副収入の位置づけになるため、確定申告をするにしても雑所得か不動産所得を白色申告で申告しているケースが多いかもしれません。

 

しかし、これを青色申告に切り替えるだけで、事業的規模に満たない小規模なアパート経営であっても青色申告控除として10万円を自動的に控除することができます。

 

青色申告者でも白色申告者でも確定申告が必要になるのは同じです。青色申告者への制約として期限内での申告が必須となりますが、単に青色申告の申請手続きをするだけで毎年経費を増やすことができるという特典があります。

 

また、青色申告のメリットはそれだけではありません。大規模修繕などの臨時的な大きな出費によって不動産所得が赤字となり、さらにこれを年金による収入と損益通算しきれずにその年に生じた損失を消化しきれなかった場合でも、青色申告であればその損失を3年間繰り越すことができます。

 

繰り越された損失は、翌年以降の不動産所得や年金と相殺することができるため、不動産所得に対する経費の効果が翌年以降の節税に役立ちます。

 

②法人の設立

給与所得には最低でも55万円の給与所得控除の非課税枠があります。定年退職によって給与所得がなくなると、この非課税枠はまったく使われることなく切り捨てられてしまいます。

 

そこで、アパートを管理する不動産管理会社を設立し、そこから本人に給与を支払えば、給与所得の非課税枠を有効に使えることができます。当然、法人にはアパート等の清掃や家賃管理などの活動の実態が求められますが、個人から法人に支払った管理料は個人の不動産所得の必要経費にもなります。

 

なお、個人名義の不動産そのものを移転させ、法人化するという方法もあるかもしれません。しかしこれには、所有権移転のための登記費用や不動産取得税などが課されるほか、移転する際の不動産の時価評価の問題も生じるため、コストや税務リスクを考えるとそれほど得策とはいえない可能性も。

 

また、前述した不動産管理会社を設立するにしても、法人に支払う管理料として実務上妥当なラインとなるのは不動産収入のほんの数%ほどとされているため、アパート管理だけではなくほかの目的と合わせて法人を設立することが有効的だといえます。

 

ただし、法人の設立・活用に関しては、金融機関によっては資産管理法人への移転が難しいケースや、法人の目的について等、一定の制約が設けられることもありますので、ローンを利用する場合は、金融機関に法人設立についても相談してください。

大切な資産を守るための準備を

中古アパート投資による資産形成は、サラリーマンにとっては老後の安定的な収入源として期待できます。老後に向けて大切なキャッシュを、本来は節約できたはずの税金によって減らしてしまうことがないよう、事前に対策しておくことが重要です。

 

 

監修

田中 康雄氏

税理士法人メディア・エス

社員税理士

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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