少子化、高齢化の進展や、単身者の増加などにより、相続のスタイルも変化しています。今回は、とくに相続問題に発展しやすい事例のうち「長期化しやすいケース」について、法律的見地から具体的な解決方法を探ります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。
遺言書があっても、トラブルが防ぎきれないケース
遺言書がある場合、被相続人が遺産の配分を指定できるため、基本的に、相続は非常に簡易に進められることができます。
しかし、遺留分までも綺麗に定めておくのはむずかしく、場合によっては裁判所で「遺留分侵害額調停」「遺留分侵害額請求訴訟」といった調定と訴訟手続きをして終わらせることもあります。
具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
◆不動産が絡むと、遺産分割はどうしても不公平になりがち
「遺留分を綺麗に定められない」ケースの多くは、不動産が関連しています。遺言書が作成された10年前・20年前と、現在の不動産の評価が異なっているというのがひとつの理由です。
路線価や公示地価等、その当時に参照できる国の基準から計算式を書いておけばどうにかなるのかもしれませんが、筆者が知る限りそのような遺言書は見たことがなく、いくら計算式をもとに細かく定めても、本当に円満解決できるかは不明です。
相続トラブルにおいて、不動産の「評価」に関する問題はどうしても発生しやすく、また、ややこしくなりがちです。なかには「揉めないことって、本当にあるのでしょうか?」とおっしゃる相談者の方もいらっしゃいますが、それでも事前対策は、やらないよりやった方が圧倒的にいいといえます。
◆亡くなる瀬戸際の手書きの遺言「これ、本当に本人が書いたの…?」
遺言書があるケースでのトラブルは、たいてい「遺留分の請求」で終わるのですが、大変なのは「遺言書無効確認訴訟」を起こすケースです。
公正証書遺言といって、公証役場で作成した遺言はキッチリと隙なく作成されますが、亡くなる瀬戸際に被相続人自身が震えるような字で書いたものは偽造の疑念をもたれたり、認知症の疑いがある場合は、遺言書そのものの信ぴょう性が問われることもあります。
それにより、遺言書無効確認訴訟へと発展することになります。
◆財産の使い込みが疑われるケースは、解決まで長期化しがち
もうひとつ、長期化するケースとしてあげられるのが「財産の使い込み」です。これは着地まで想像以上に長引きます。
何年分もの通帳履歴を出し、それをすべて追及することになりますが、大体の場合、本当に使い込んでしまっていてお金が戻せません。また、使い込んでしまっている人からの反発もあり、決着まで2年、3年とかかることも多く、非常にストレスが大きくなります。
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
弁護士法人 山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階
電話番号 045-211-4275
神奈川県弁護士会 所属
山村法律事務所ウェブサイト:https://fudousan-lawyer.jp/
不動産大家トラブル解決ドットコム:https://fudousan-ooya.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098
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連載相続と不動産に強い弁護士が解説!損しない相続・遺産分割の「奥の手」