サブリース契約の概要とメリット
大家さんがサブリース会社に物件を貸し、サブリース会社が居住者に転貸借する「サブリース契約」をご存じでしょうか。
厳密には、大家さんとサブリース会社の契約を「原賃貸借契約(=マスターリース契約)」、サブリース会社と居住者の契約を「転貸借契約(=サブリース契約)」といいますが、一般的にこれらの契約をまとめて「サブリース契約」と呼んでいます。
大家さんにとって、サブリース契約のいちばんのメリットは空室保証です。サブリース会社も、これを売り文句にしています。
大家さんとして賃貸物件を運営をするうえで、空室リスクの回避はとても重要です。
居住者が退去後、次の賃借人が入居しなければ、その間の収益はゼロになってしまいます。所有している物件が少ない初心者のオーナーの場合、1部屋でも空室があれば大変です。
そこに空室保証があれば、融資を受けていても毎月必ず返せるので安心、と考える大家さんが多いのでしょう。
サブリース契約の落とし穴①…かぼちゃの馬車事件
しかし、サブリース契約には空室保証というメリットがある一方、落とし穴もあります。
不動産投資に興味がある方なら、2018年の「かぼちゃの馬車事件」をご記憶ではないでしょうか。これは、空室保証をうたっていたサブリース会社が倒産してしまった事例です。
サブリース契約による空室保証は、不動産会社が倒産しない限り有効です。しかし、契約上では空室保証の支払いが取り決められていたとしても、サブリース会社の経営悪化により満額が支払われなかったり、支払いが遅れたりするトラブルは少なくありません。
大手企業の倒産はイメージしづらいかもしれませんが、実際にサブリース会社の破産という事例は2018年に起こっています。サブリース契約による空室保証は絶対ではないのです。
「かぼちゃの馬車事件」は、物件の所有権譲渡の代わりに借金帳消しということで解決しましたが、サブリース契約のトラブルはかなり多いというのが現場の実感です。
サブリース契約の落とし穴②…「逆ザヤ」事件
サブリース会社は、オーナーから借りた物件をさらに高額で転借することで利益を出します。たとえば、オーナーから8万円で借りた物件を10万円で転借すれば、2万円の利益が残ります。
しかしここ数年、本来適正賃料よりも高い家賃保証の支払いが組まれた物件が販売されていることが発覚しました。これは「逆ザヤ」であり、当然ですが、サブリース会社の経営も悪化していきました。
実は、サブリースだけで事業として収益を上げ続けるのは簡単ではありません。本来は、サブリースによる薄い利益を少しずつ積み上げ、数が増えれば、大数の法則によってリスクも平均化でき、利益が出る…という仕組みです。
では、今回の件において、サブリース会社はどのタイミングで稼いでいるのかというと、かぼちゃの馬車事件は建築費で、逆ザヤのサブリース事件は不動産の売却金額で…というように、不動産の売買のタイミングで大きな利益を得ています。
つまり、サブリースはあくまでも不動産売買で儲けるためのオマケであり、「サブリース契約による空室保証で安心!」という付加価値をつけ、不動産の販売を促進することが目的なのです。
サブリースで多少の赤字が出ても、不動産売買のときの手数料等で大きな利益を得ているため、結果的には黒字になる、というのが不動産会社の狙いなのです。
大家業には「リスクをとる覚悟」が必要
サブリース契約は本来、オーナーの懸念である「空室リスク」をサポートするものであり、その点ではよい制度だといえるでしょう。
しかし、上述のようにトラブルも多く、消費者庁も注意喚起をしています。
賃貸経営をする以上、サブリースの安心感を求めるよりも、空室リスクを踏まえたうえで大家業をする覚悟が必要だと考えます。
ハッキリ言えるのは「完璧な物件」というものはないということです。条件がよければ、そのぶん値段も高くなります。利益関係以外の点では、許容できるリスクであれば受け入れるのもありです。しかし、リスクを認識せずに不動産を購入してしまうと、想定外の損失が発生してしまいます。
老朽化や高低差、再建築不可といった弱点を知ったうえで投資を行う投資家はいますし、それらをむしろ強みにしていることもあります。弱点により、物件が安くなっているケースも多くあります。
しかし、不動産投資は価格を攻めないと収益が上げられないものです。物件の弱点を理解したうえで、自分の時間と能力でどこまで対応できるのか、戦略を立てて挑戦することをお勧めします。
山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦
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