ひとり暮らしの高齢母、父の七回忌以降急速に弱り…
筆者のもとに、相続トラブルの相談が持ち込まれました。
相談者は、近藤さん(仮名)とおっしゃる50歳の独身女性です。女性は3人きょうだいの真ん中で、4歳年上の姉、2歳年下の弟がいます。
女性の父親は12年前に亡くなっており、そのときは、母親がすべての遺産を相続しました。父親の財産の内容は、横浜市の郊外の2LDKの一軒家と、約2,000万円の現預金です。
「70代半ばで亡くなった父は、遺された母の生活のことをとても気にしていました。両親は同い年の夫婦で、とても仲がよかったのです」
そのため、子どもたちは遺産相続を放棄し、すべて母親の老後生活のために充てることで同意しました。
母親は父親が亡くなったあとも、思い出の詰まった自宅でひとり暮らしを続けていましたが、年齢が高くなるに従い、だんだん体が弱り、生活のサポートが必要になりました。
「父の七回忌を終えたあたりから、母が急に弱ってきまして…」
「あなたがそばにいれば安心」…同居&介護を引き受ける羽目に
近藤さんは20代半ばで結婚し、夫の仕事の都合で長年関西に暮らしていましたが、父親を見送った数年後に離婚。お子さんはいません。その後は契約社員の仕事に就き、実家から数駅離れたエリアの賃貸アパートで独り暮らしをしていました。
姉はさいたま市で自分の家族と生活しており、弟は東京都のマンションで、やはり自分の家族と暮らしています。
母親と近居の近藤さんは、生活のサポートが必要になった母親を見て、姉と弟に「実家を売却して母親に施設へ入ってもらってはどうか」と相談しました。
「ところが、姉と弟からは〈施設なんてとんでもない〉と、大変な反発がありました。おまけに、姉から直接母へ話が行ってしまい、母には〈私が邪魔ってことなのね?〉と号泣されてしまって…。私ひとりが悪者です。泣きじゃくる母親をなだめるのは、本当に大変でした」
しかし、母をそのまま置いておくのは心配です。
「そのため〈きょうだいで順番に様子を見に行くのはどうか〉と提案しました。しかし、姉は距離と家族の世話を理由に渋り、弟は仕事が多忙なうえ、フルタイムで働く妻にも負担はかけられないというのです」
すると姉から、賃貸暮らしで身軽な近藤さんに、母親との同居を提案されました。
「姉からは〈あなたの家賃も助かるし、私もできる限り援助するから〉、弟からは〈お姉ちゃんが一緒にいてくれたら安心。お金もサポートする〉といわれて…。なにより、施設の話で母親に泣かれたときに〈お母さんのことは一番大事〉〈できることなら面倒を見たい〉と慰めた言葉で、自分自身を縛ることになってしまいました」
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