(※画像はイメージです/PIXTA)

多くの相続人が、相続前に経験する「親の介護問題」。介護負担が特定の人物に偏るなど不満が生じやすい一方、介護にノータッチだった相続人は「親のお金を使い込んだのでは」「家賃や生活費が浮かせてチャッカリしている」等、不信感を持つこともあり、対立が生じがちです。ここでは、法律的見地から「揉めやすい相続事例」を取り上げ、具体的な解決方法を探ります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

同居の子・別居の子…相続時に揉める根本原因

相続において頻発するトラブルとして、過去の被相続人の同居・介護に起因するものがあります。

 

相続は「相続財産」という金銭的評価できるものを分配する手続きですが、その際、やはり「感情面」が関わってきます。

 

感情面の問題は「ずっとお兄ちゃんだけ贔屓されていた!」といった子ども時代の不公平感の持ち越しもありますが、それ以上に、年老いた親の介護問題における「感情的なわだかまり」「見えない部分への疑念」が多くあります。

 

典型的なのが「実家に残った子ども vs. 実家から出た子ども」という対立構造です。具体的には「被相続人となる親と同居していた長男と、家を離れ、実家にあまり顔を出さない二男」などが典型的なケースです。そこに嫁いだ姉妹が絡むこともあります。

 

具体的なケースを見てみましょう。

 

《相続人関係図》

 

被相続人…母親

相続人……子ども2名(長男・二男)

相続財産:

不動産:地方都市の戸建て住宅

預貯金:1,000万円

 

《背景と実情》

 

専業主婦だった母親が亡くなり、相続が発生(父親は数年前に死去)。相続財産は地方都市の自宅不動産と預貯金約1,000万円。相続人は子ども2人(長男・二男)。

 

兄(長男)は亡くなった母親と実家で同居しており、弟(二男)は別居。兄は介護負担の大きさや母親との生活に伴う出費を理由に「寄与分」として多く財産を相続したいと主張。

 

別居していた弟(二男)は、兄がいろいろなことにかこつけ、親のお金を使い込んでいるのではないかと疑うとともに、長年にわたる同居で、家賃負担が軽減されていることから、その分を「不当利得返還請求」してもらいたいと考え、対立している。


高齢の親と同居して面倒を見てきた子どもが、

 

「親の世話や介護をしてきた。リフォーム費用も負担した。だから、その分くらいは多くもらってしかるべき」

 

と主張する一方で、実家を出た子どもが、

 

「手伝っていると主張しているが、実際には親の金を横領したに違いない」

「手伝っていると称して、お小遣いという名目で親の金を使ったのでは?」

 

といった主張をする、というものがよく見られます。さらに、

 

「同居して世話をしてるというが、その分家賃が浮いてる。実家も相続財産なのだから、家賃分も払ってくれ」

 

と主張するケースもあります。

 

筆者の事務所でも、同居する子ども・実家を出た子どもの両方の立場のクライアントについて、多数の対応をしてきました。正直、類似のケースは枚挙にいとまがありません。

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