多くの相続人が、相続前に経験する「親の介護問題」。介護負担が特定の人物に偏るなど不満が生じやすい一方、介護にノータッチだった相続人は「親のお金を使い込んだのでは」「家賃や生活費が浮かせてチャッカリしている」等、不信感を持つこともあり、対立が生じがちです。ここでは、法律的見地から「揉めやすい相続事例」を取り上げ、具体的な解決方法を探ります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。
同居の子・別居の子…相続時に揉める根本原因
相続において頻発するトラブルとして、過去の被相続人の同居・介護に起因するものがあります。
相続は「相続財産」という金銭的評価できるものを分配する手続きですが、その際、やはり「感情面」が関わってきます。
感情面の問題は「ずっとお兄ちゃんだけ贔屓されていた!」といった子ども時代の不公平感の持ち越しもありますが、それ以上に、年老いた親の介護問題における「感情的なわだかまり」「見えない部分への疑念」が多くあります。
典型的なのが「実家に残った子ども vs. 実家から出た子ども」という対立構造です。具体的には「被相続人となる親と同居していた長男と、家を離れ、実家にあまり顔を出さない二男」などが典型的なケースです。そこに嫁いだ姉妹が絡むこともあります。
具体的なケースを見てみましょう。
《相続人関係図》
被相続人…母親
相続人……子ども2名(長男・二男)
相続財産:
不動産:地方都市の戸建て住宅
預貯金:1,000万円
《背景と実情》
専業主婦だった母親が亡くなり、相続が発生(父親は数年前に死去)。相続財産は地方都市の自宅不動産と預貯金約1,000万円。相続人は子ども2人(長男・二男)。
兄(長男)は亡くなった母親と実家で同居しており、弟(二男)は別居。兄は介護負担の大きさや母親との生活に伴う出費を理由に「寄与分」として多く財産を相続したいと主張。
別居していた弟(二男)は、兄がいろいろなことにかこつけ、親のお金を使い込んでいるのではないかと疑うとともに、長年にわたる同居で、家賃負担が軽減されていることから、その分を「不当利得返還請求」してもらいたいと考え、対立している。
高齢の親と同居して面倒を見てきた子どもが、
「親の世話や介護をしてきた。リフォーム費用も負担した。だから、その分くらいは多くもらってしかるべき」
と主張する一方で、実家を出た子どもが、
「手伝っていると主張しているが、実際には親の金を横領したに違いない」
「手伝っていると称して、お小遣いという名目で親の金を使ったのでは?」
といった主張をする、というものがよく見られます。さらに、
「同居して世話をしてるというが、その分家賃が浮いてる。実家も相続財産なのだから、家賃分も払ってくれ」
と主張するケースもあります。
筆者の事務所でも、同居する子ども・実家を出た子どもの両方の立場のクライアントについて、多数の対応をしてきました。正直、類似のケースは枚挙にいとまがありません。
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数7名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
弁護士法人 山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階
電話番号 045-211-4275
神奈川県弁護士会 所属
山村法律事務所ウェブサイト:https://fudousan-lawyer.jp/
不動産大家トラブル解決ドットコム:https://fudousan-ooya.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続と不動産に強い弁護士が解説!損しない相続・遺産分割の「奥の手」