日本の感覚のままでは「空室リスク」が高まる!?
さて、前回で語ったような考え方を起点にした、フィリピン不動産の客付け方法を解説していきましょう。そのノウハウは、国内不動産投資とかなり様相を異にします。
なぜならフィリピンには、路面に店を構えている不動産業者や『スーモ』『アットホーム』のような賃貸ポータルサイトがないためです。
また、日本のレインズのような情報システムもないため、入居募集は賃貸仲介の不動産会社や個人のブローカーを通じて行います。
フィリピン人オーナーであれば、ブローカー10人くらいに自分の物件を渡して、借り手を探してもらうのが一般的です。
しかしオーナーが日本人である場合には、一度ブローカーに頼んだら任せきりという人が多いのです。他に頼れる業者を知らないということ、または日本の専属専任媒介契約(※)のイメージで「一度この人にお願いしたら最後まで面倒を見てもらわなければいけない」という感覚があるのかもしれません。
私たちは、それがフィリピンの空室率が高いと言われる要因のひとつと考えています。
現地のフィリピン人はクチコミとネットを活用
ではフィリピン人がどうやって不動産物件を探しているのかと言えば、クチコミとインターネットです。
探す最初の起点が、まず親族の娘や息子。そして友人、友人の友人、さらにその友人と広がっていきます。実際、そうした係累のすべてをつないでも、100人くらいがせいぜいです。さすがにそれでは部屋が見つからないため、ローカルのフィリピン人は『OLX(http://www.olx.ph/)』というサイトで物件を探します。
このサイトは不動産専門のものではありません。ありていに言えば、Amazonのマーケットプレイスや、日本でいうとYahoo !オークションのような感覚です。あらゆる情報が掲載されているサイトで、日本の宅建業法のように法律に基づいたルールはありません。「OLX」「リアルエステート」「フィリピン」と入力、検索すれば、物件の情報が見つかります。
不動産物件については、賃貸も売買も取り扱っており、サイト上に物件詳細とブローカーの連絡先が記されています。物件に興味があれば、直接コンタクトを取って価格や条件の交渉をします。
そこに情報を出しているのは、業者ではなく個人です。このサイトを見ているのは9割がたローカルのフィリピン人で、日本人はほとんど見ていないものと推測されます。しかし渡辺が個人ブローカーを行っていた時代のお客様には、2人ほど、コンドミニアムの売買で騙された経験のある方がいました。
契約書が郵送されてサインをして送り返し、入金したのですが、それから連絡がプツリと途切れてしまったそうです。
これは日本人だから騙されたというわけではなく、フィリピンのローカルでも騙されることがあるようです。どの物件が怪しいのかを見抜く方法は、残念ながらありません。免許やナンバーを書くところはありませんし、審査もありません。日本からでも、遠隔で登録することができます。
このように情報インフラが未成熟なフィリピンにおいて不動産投資で勝つためには、現状を正しく理解し、対策を講じる必要があります。以降でその具体的なノウハウを見ていきましょう。
※ 専属専任媒介契約……賃貸・売買の仲介を1社のみと契約を行い、他社には依頼できない契約。他社に依頼した場合には、違約金が発生する。一般媒介契約であれば、複数社に依頼をすることが可能。日本の宅建業法で定められている。