「労働参加が進むケースでは…」前提条件への違和感
年金破綻の不安について、厚生労働省は下記のように回答しています。
“Q.少子高齢化が進行すると、若い世代の年金額は減ってしまうのではないでしょうか?
A.年金制度は、5年に一度、健康診断のような形で行う「公的年金の財政検証」によって100年先までの見通しを検証しており、令和元年の財政検証では、若い世代が将来受け取る年金は、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込みです。年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません。”(厚生労働省HP『年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました』)
……『2019(令和元)年財政検証結果レポート「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」』では、経済成長率と労働参加の進み具合などから、6つのケースについて年金額をシミュレーションしています。ケース1~4までは実質経済成長率が「+0.2~0.9%」、ケース5が実質経済成長率「0.0%」、ケース6が実質経済成長率「-0.5%」です。
「経済は成長し続けるもの」というのが通説ではありますが、コロナ感染拡大をはじめ、「まさかの事態」が起こりうることは、国民皆が痛感していることでしょう。
実際、国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2001年454万円だった会社員の平均給与は、以降、ITバブルやリーマンショックなどにより、前年比マイナスを連発、2009年に405万9,000円にまで下落しています。
その後、アベノミクスの効果もあり、平均給与は増加傾向になりますが、2019年は前年比99.0%で436万4,000円。20年で3.8%のマイナスを記録しています(関連記事『夫婦の年金額「2040年に25万円、2060年に32万円」…国の試算に疑問符』)。
「年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません」としながらも、厚労省HP『いっしょに検証!公的年金』には、思わぬ文言が記されていました。
“賦課方式では、年金給付の財源は現役世代からの保険料が主なものとなります。しかし、このまま少子高齢化が進み、年金の給付に必要な額を現役世代からの保険料収入だけで用意しようとすると、収入が不足し、十分な年金給付を行えなくなる可能性があります”
……未来の不安は尽きませんが、実際のところ、今の高齢者の方々はいくら年金をもらっているのか?